『べらぼう』蔦屋重三郎の出版人人生の幕開けとなった『吉原細見』。販売も編集も蔦重が務めたその本に記されていたのは…
◆耕書堂の経営を支えた貸本業 この頃の貸本業は、借りにくる人をお店で待ち続けるのではなく、借りてくれそうな人がいるところへ、書店員が本を持って行くというやりかたをとっていました。重三郎も、本を背負い、お客さんのところへ通ったはずです。ここでポイントとなってくるのが、重三郎の商売範囲、ナワバリが吉原だったということです。 位の高い遊女はとても教養があったので、本を読んで色々勉強していました。そんなお姉さんたちのところへ、頻繁に貸本を持って行くわけですから、重三郎は自然と吉原に顔が利くようになります。 内情も知ることになるし、使用人の人たちとも仲良くなっていきます。そして、何より、吉原に通う有名な作家たちとコネを持つことができたのです。 「先生。私は、今度こんな本をつくりたいんですよ」 「次はうちでもかいて下さいよ」 そんな会話があったかも知れません。 コネというのは、そのまま保障になります。トレンドの発信地である吉原で生まれ育ち、自分の一族も働いている。そして、そこで書店の実店舗をかまえている。そんな出版業者って、信用できます。作家の先生たちが、蔦屋重三郎と仕事をするようになったのは、必然なのです。 貸本業は、出版社耕書堂の経営を支えるために、なくてはならない部門だったといえます。 ※本稿は、『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』(興陽館)の一部を再編集したものです。
ツタヤピロコ
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