「走るホテル」の最上級クラス、110万円払って乗り込むVIPたちの正体は… 北米大陸横断列車、カナディアン乗車記②「鉄道なにコレ!?」【第58回】
カナダ最大都市の東部オンタリオ州トロントと西部の主要都市ブリティッシュコロンビア州バンクーバーの約4466キロを約97時間で結ぶVIA鉄道カナダの看板列車「カナディアン」の後部2両には、まるで「走るホテル」のような最上級クラス「プレスティージ寝台車クラス」が計8室ある。全区間乗った場合の正規料金は1人当たり4981カナダドル(約55万円)からで、2人用客室なので計110万円の大枚をはたくことになる。JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」などをほうふつとさせる高額チケットを手にしたVIPたちと会話し、彼らの正体を探った。(共同通信=大塚圭一郎) 【写真】カナダの「古希」迎える旧型客車、先住民鉄道で今も現役 「鉄道なにコレ!?」第42回
記者が音声でも解説しています。 【プレスティージ寝台車クラス】VIA鉄道カナダが夜行列車「カナディアン」だけに連結している最上級の寝台車で、旅客機のファーストクラスに相当する。2人用の客室で広さは約4・4平方メートルあり、トイレとシャワーも備えている。日中は「く」の字になった長いすを使い、大型テレビで好きな番組を視聴できる。夜は壁からダブルベッドが出てくる。利用者の要望を受け付けるコンシェルジュがおり、展望車のバーカウンターや食堂車ではアルコール類も無料で楽しめる。 トロント―バンクーバー間の全区間に乗った場合は2023年10月15日~24年3月31日の冬季正規料金が1人当たり4981カナダドル(約55万円)から。繁忙期の2024年5月1日~10月31日の夏季は1人6762カナダドル(約74万円)からに跳ね上がり、これはエコノミークラスの最低料金の約13倍、寝台車プラスクラスの3倍弱に当たる。
▽古き良き時代の〝遺産〟ルームタグには日本語も 私が2023年12月の冬休みにトロント・ユニオン駅で乗り込んだバンクーバー行きのカナディアンは、定刻の午前9時55分に出発した。2人用個室「寝台車プラスクラス」の室内にある2脚のいすに息子とともに腰かけていると、客室乗務員のジェネルさんがやって来た。 ジェネルさんは照明のスイッチの位置や室内に備わっているトイレのこと、非常時の脱出方法などを説明してくれた。その上で「夕方に(上下の2段になった寝台を引き出す)ベッドメーキングが必要な時と、朝に片付ける時にはそこにつり下がっているルームタグを扉に掲げてください。私が対応します」と話した。 ホテルの客室で見かけるのと同じようなルームタグは、カナダの公用語である英語とフランス語に加えてドイツ語、スペイン語、そして日本語も記されている。唯一のアジアの言語に国連公用語で話者も多い中国語ではなく、日本語を採用しているのは「最近は少なくなってしまったが、かつては大勢の日本人が乗車していた」(カナディアンに乗務していたエミリー・ファラージさん)という古き良き時代の〝遺産〟らしい。