「走るホテル」の最上級クラス、110万円払って乗り込むVIPたちの正体は… 北米大陸横断列車、カナディアン乗車記②「鉄道なにコレ!?」【第58回】
男性は71歳で、1988年に冬季オリンピック・パラリンピックが開かれた西部アルバータ州カルガリーの在住。エレベーター大手、フジテックのカナダ法人の元社員で「滋賀県の本社に呼んでもらった時に東海道新幹線に乗ったんだ」と教えてくれた。 私も勤務先の大阪支社経済部で電機・機械業界を担当していた時に取材したことがあったため「本社には試験用のエレベーターが昇り降りしている高い塔がありますね」と話すと、「あの塔のエレベーターも体験したよ。ものすごい速さで、地上から最高地点まであっという間に着いた」と振り返った。 私も教えられるまで知らずに利用していたが、バンクーバー国際空港とカルガリー国際空港のエレベーターやエスカレーター、動く歩道も「フジテック製が採用されている」という。技術力が高い日系メーカーの製品が外国でも活躍しているのはうれしいことだ。 男性がカナダでは初めての鉄道旅行、しかも値が張るプレスティージ寝台車クラスを選んだのには確固たる理由があった。妻が東部モントリオールで脚の手術を受けて自宅に戻る帰路だったため、リハビリを兼ねて適度に歩くことができ、快適に過ごせる移動空間を選んだという。「料金は高かったけれども、妻が適度な運動ができて居住性が優れた客室を良いと考えたんだ」という男性の気遣いに私もうなずいた。
「それにこの列車に(アルバータ州)エドモントンまで乗り、帰宅すればクリスマスまでにカルガリーに着けるんだ。だから、今年も家族が集まって一緒に過ごすことができるんだ」と男性は目を細めた。 ▽学会に合わせて北米を周遊する医師夫妻 展望車の1階にはカクテルなどのアルコール類を楽しめるバーカウンターを設けた「ミューラルラウンジ」もある。寝台車プラスクラスと開放型の2段寝台の利用者も訪れることができるが、アルコール類は有料だ。これに対し、プレスティージ寝台車クラスの利用者は無料で注文できる。 ミューラルラウンジの座席で無料のコーヒーをすすっていると、優雅な雰囲気の女性が来たのであいさつをした。オーストラリア・ブリスベンに住む女性で、医師の夫が学会に出席したのに合わせてカナダのモントリオールやトロント、バンクーバー、アメリカのシカゴ、サンフランシスコといった北米各地を周遊する旅行の最中だという。