3本柱誇る阪神が目指すべきは落合型野球?!
この年は統一球が導入され、チーム防御率は3チームが2点台で、広島のチーム本塁打数は、わずか52本。100本をこえたのは、巨人1チームのみという投手優位の状況を生かしてナゴヤドームという地の利にも乗って貫いたディフェンス野球である。阪神にも甲子園という地の利がある。得点力不足の打線の不安を考えると「投高打低」の落合型野球を一つの理想とするのは、面白いプランだ。 だが、その時の落合中日と阪神の決定的な違いがある。 「あの時の中日はセンターラインが固まっていました。キャッチャーが谷繁さんに二遊間が鉄壁の“アライバコンビ”。センターには大島。守り勝つ布陣があり、投手型とはいえ、打線の軸にはブランコがいました。対して阪神でレギュラーが確定しているポジションはどこでしょう? 福留、糸井あたりは休ませながら使うことになるでしょうし、投手力は整っていますが、総合力で考えれば、落合中日のような戦いができるかどうか」と里崎氏が指摘する。 当時の中日は、不動のキャッチャーの谷繁元信がいて、荒木雅博―井端弘和の二遊間にセンターは守備範囲の広い大島洋平。センターラインの守備力もリーグナンバーワンだった。しかも、打低とはいえ、1番荒木、2番井端、3番森野将彦の3人はほぼ固定され、4番も前半に和田一浩、夏以降はブランコがドカンと座り、打線をとっかえひっかえしなければ、やりくりできないというような陣容ではなかった。 対して今季の阪神はどうか。 上本博紀が復帰して二塁のポジションに落ち着くと、キャプテンに就任した糸原健斗はどこへ回るのか。ショートは鳥谷敬が再挑戦を宣言。ドラフト3位の木浪に加え、キャンプのチームMVPを獲得した7年目の北條史也も一皮剥けた。三塁の大山悠輔、一塁のマルテを含めた内野布陣は、サバイバルとなるのか。 矢野監督は「競争」という言葉を使うが、裏を返せば、まだ何も決まっていないという現実がある。 外野に目を向けても、センターが今なお白紙。近本はセンターを任すには肩が弱い。江越大賀、高山俊、中谷大将の3人が候補だが、センターラインは不安のまま。また4月で42歳になる福留孝介、怪我がつきまとう糸井嘉男の2人も、どれだけの試合数を維持できるのか未知数である。 投手力は補強で整備されたが、それを支えるべき守備力、最低限の打力が、落合型のディフェンス野球を実現するには物足りない。金本知憲前監督時代に、打撃強化にばかり目をやり、守備力という点をなおざりにしてきた“ツケ”でもあるのだが……。 矢野監督が、落合型野球を目指しているのかどうか、わからないが、メッセンジャー、西、ガルシアの3本柱を生かす理想はそこだろう。ちなみに里崎氏の阪神の順位予想は「オープン戦を見て検討し直しますが、あくまでも昨年の結果をベースに考えると現段階ではBクラスを脱する材料は見当たらない」という厳しいものになっている。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)