「僕は病気なの?」不安と緊張でどうにかなりそうなのに、病名がつかない。「グレーゾーンの苦悩」とは【体験談&専門医アドバイス】
なぜ不安なのか分からない
高校生の頃、Hさんは人と話すときにコンプレックスや劣等感を強く感じるようになりました。 「常に劣等感があって孤独でした。みんなよくしてくれて可愛いとか言われましたが、自分はいつも空虚でした。みんなが描いている自分と実際の自分が違っていて、本当の自分は違う、カッコ悪いんだと自己否定しました。高2の時は死にたい気持ちが強くなって、電車通学していたのですが、ずっと線路の方を見つめていました。そのくせプライドが高くて、ダサい自分が許せなかった。ダサい、ダサいと思っていました。常にかっこいい感じに憧れていて、自分を殺したかったのを覚えています。」 Hさんは、毎日葛藤し、悶絶したそうです。「自分はダサい」と思っていたのですが、両親にも姉にも誰にも打ち明けられず、孤独だったと言います。 「まさか息子がそこまで思い詰めているとは夢にも思わず、駅前の繁華街でずっと膝を抱えていたと後から聞いて驚きました。」 高校生になるとスラッと背が高くなり、「カッコいい!」と女の子からもモテるようになったHさん。友達からも愛されているし、一見普通の高校生だったそうです。しかし、それに反して、ますます強い不安を感じるようになったと言います。「なんで不安なんだ?」と自問自答しても答えが見つからず、いまだに原因は分かりません。 「いつも通学の途中から緊張してきて、教室に着く頃には不安と緊張でいっぱいでした。今でもはっきりした理由は分かりません。不安感が非常に強くて、今日一日、人と会う場面が何回あるんだろうと数えるほどです。それはいまだに変わることはありません。」 小学校から高校までHさんにはずっと変わらないことがあります。 「先生から怒られるのも怖くて嫌なので、できるだけ問題を起こさないように気を遣ってきました。一番の悩みは、いつもと違うことが起きることです。文化祭や入学式、卒業式、そうしたイレギュラーなイベントがものすごく苦手です。入学式ともなると、どういう校舎なのか、どういう先生なのか、どういう場所なのか、写真撮影はあるのかなど、考えると不安に押し潰されそうになりました。文化祭とかはみんな気持ちが盛り上がるじゃないですか。普通の人にとっては楽しむ時間かもしれませんが、僕は友達の気持ちとは正反対。不安感が強くなってみんなと一緒に盛り上がれないから孤独だし、部室に一人こもってゲームをしていました。卒業式もみんなより早く帰ってしまうので、写真撮影に参加したことがありません。思い出の写真もありません。」 苦しみながらもなんとか高校を卒業し、大学に進学したHさん。しかし、不安や緊張から解放されることはなく悩み続けました。後編では、Hさんの大学時代や職場での悩みに迫ります。