ラーメン山岡家の噂、結界マップ 「国道16号内側にはない」を検証
自社社員がネギを栽培
そうした影響もあって、このネギの年間消費量は全店で約900tと膨大な量だ。しかも驚くことに、そのうち140tは専用農場で自社社員が育てたもので、残りは大手の契約農家のものを使っている。自社の専用農場は丸千代山岡家が関東エリアの拠点にしている茨城県つくば市に約60カ所もあり、今期は生産量を1.5倍の210tに増やす計画だ。 このような「店内手作りの追求」と「株式市場への上場」は、一般論では相性が悪い。上場すれば、株主から経営効率を強く求められるようになるからだ。丸千代山岡家が“異質”なのは2006年にJASDAQ、そして現在は東証スタンダードに上場しながら、あえて非効率を選びつつ、業績を上げるという矛盾した離れ業をやってのけている点にある。 しかも、だ。各店舗はすべて直営。味への追求が一途な創業者・山岡氏の個人店として始まったため、フランチャイズ店の力を借りて店舗展開を広げる戦略を取らない。 「社員を育てて当店が目指す味を作れるようにし、店の運営を任せるのが当社のスタイル。その分、出店スピードは遅く、年間7店から10店程度にとどまるが、味ありきという考えだ」(大島氏)という。 こうした味重視の姿勢は、同社の自己満足で終わっていない。来店客の舌は正直だ。過去に実施したアンケートでは、スープなどを店内調理している事実を知っている客は3割にとどまった。つまり、山岡家の繁盛ぶりは「手作り」という聞こえがいい言葉のイメージによるものではなく、味そのものが高い支持を受けているからこそと言えるだろう。 24時間という営業スタイルも、山岡家人気の秘密を語る上で外せない(一部の店舗は、24時間営業ではない)。豚骨だしのパンチが効いた“がっつりラーメン”が、日中も深夜も、長距離を走るトラックドライバーやルート配送中の労働者の旺盛な食欲に応えている。と、そこまでは想像できるかもしれないが、この24時間営業が現代の若者にもマッチしていると知ったらどうだろう。 実はこの山岡家、卓上に置かれた調味料を使ったオリジナルの食べ方などを紹介した動画がSNSやYouTubeによく投稿されていて、バズるものも多い。深夜に目に入って食欲に火が付いても店は営業しているため、すぐに足を運びやすいのだ。 24時間営業と聞くと、「深夜あるいは早朝にこってりラーメンを食べる人がいるのか」と思うかもしれないが、「日中も深夜・早朝も、平日・土日を問わず盛況で満席状態が続くことは珍しくない」と大島氏。訪れる客層は肉体労働者、スーツ姿のビジネスパーソン、若者・カップル、子供連れのファミリーなどと多種多様だ。唯一、空白時間帯になるのは午前8時から同10時くらいまでの間のみだという。