「西園寺さんは家事をしない」最終回直前Pコメント――「全てを奇麗に収める意識は取っ払った」
TBS系では、火曜ドラマ「西園寺さんは家事をしない」が放送中。原作は「ホタルノヒカリ」などを手掛けた人気漫画家・ひうらさとる氏による同名コミック(講談社「BE・LOVE」連載)。徹底して家事をしない主人公・西園寺一妃(松本若菜)と年下の訳ありシングルファーザー・楠見俊直(松村北斗)&その娘・ルカ(倉田瑛茉)の風変わりな同居生活を通して「幸せって何? 家族って何?」を考えるハートフルラブコメディーだ。
今回は、視聴者から寄せられる温かいメッセージを糧に、キャストやスタッフとともにドラマ作りに向き合ってきた岩崎愛奈プロデューサーに、心に残っている出来事や最終回に向けた視聴者へのメッセージを聞いた。最終回を心待ちにしている視聴者の心に染み渡る、珠玉のエピソードをお届けする。
“恋”だけではないもっと大きな愛を描くべく発進したドラマ
――いよいよ最終回を迎えますが、これまでの放送を振り返っていかがですか? 「この企画を立ち上げたときに、“家族って何だろう”“幸せって何だろう”を考えるドラマにしたいと思っていました。結果的に、当初思っていた以上に家族や幸せについて濃密に考えた数か月になりました。ものすごく大きなテーマを掲げたので、やはりそこに切り込んでいくのは本当に難しくて。それでも、私1人ではなく、脚本家チーム、キャスト、スタッフ、そして原作のひうら先生と、全員で一緒に悩んで考えて話し合ってアイディアを出し合って…と繰り返して一歩一歩進んできたので、最終話までたどり着けたことがとても感慨深いです。制作はもちろん大変ではありますが、全員が一緒にワクワクする方に向かって進んでいる感触があり、大変さを補って余りある幸福な時間でした。それはやっぱり、西園寺さんというパワーのある主人公が教えてくれることがたくさんあったから。私自身も、『こうあるべき』という固定概念にとらわれていたなと気付いた瞬間が何度もありました。そういう意味でも、私にとって本作はとても大事な作品になりました」 ――特に印象深かった反響はありましたか? 「本作では、主人公の西園寺さんたちが“偽家族”という前例のないことを始め、どんどん進んでいく姿が描かれています。要は、誰も見たことがない“家族・愛・幸せ”を作っていく物語を描こうとしていました。でも“誰も見たことがない”ということは、理解してもらうのが難しいということでもある。『何言ってるの!?』『よく分からない』と感じる方もたくさんいるかもしれないと思っていたんです。でも、そんな心配をよそに、肯定的に受け止めてくれる方、面白がってくれる方が本当に多かった。皆さんが、西園寺さんたちと一緒に前例のない形を探して考えてくれていることが伝わってきて。視聴者の皆さんが西園寺さんや楠見を信頼してくれて、『西園寺さんたちならこの問題を解決してくれそう!』『何か新しい形を見つけてくれそう!』と思ってくれていたんだなと。そういった反応がとてもうれしかったです」 ――“胸キュンのTBS火ドラ”枠で、ラブコメを通して新しい家族のロールモデルが描かれることも珍しかったと感じます。 「私自身、“火曜ドラマ”がすごく好きなので、この枠が持つ特有の軽やかさはしっかり継承して、大事にしていきたいと思っていました。ただ、ラブコメとは言うけれど、その“ラブ”は“恋”だけじゃないというところに切り込んでみたかったんです。それはきっと、私自身が出産して家族が増えたことが大きかったのかもしれません。とんでもなく大きな愛や、誰かを心から大事だと思う気持ちがこの世には存在するんだなということを知りましたし、その周りには手を差し伸べてくれる人や見守ってくれる人がこんなにもたくさんいるのかと知って、人と人とのつながりや思いやりという大きな優しさや愛情にたくさん触れました。それで、“恋”に収まらない大きな愛を描いてみたいと思うようになりました。恋やキュン、家族、幸せ、思いやり。それをどう配合するかを考えながら、今までの火曜ドラマとは少し視点をずらした作品にすることは意識しました」 ――制作において苦労したことは? 「“家族って何?”“幸せって何?”というところに切り込んでいくのは、最初に考えていたよりもずっと難しかったです。また、さまざまな価値観が尊重されるようになり、答えなんてない時代。そんな中で、このドラマなりの答えや考えを見つけていくのはとても大変でした。それでも、キャストもスタッフも、みんなで一緒に楽しみながら取り組めたので、このチームなら大丈夫だと思えました。原作のひうら先生がアイデアをくださることもあって、本当に心強かった。まさに全員が一丸となっていました。チームのスローガンは、原作にある西園寺さんの言葉『迷った時はワクワクする方へ』そのスローガンを胸に、みんなでワクワクする方に進めた気がしています。このドラマを作れたことで、私自身もこれまで持っていた固定概念やリミッターを少し外すことができた気もしています」