トランプ前大統領を起訴したスミス特別検察官、大統領の就任前に辞任の見通し
米司法省のジャック・スミス特別検察官が、ドナルド・トランプ次期大統領の来年1月の就任前に辞任する見込みだと、BBCが提携する米CBSニュースが13日報じた。スミス氏は、トランプ次期大統領が絡んだ2件の連邦刑事事件で捜査を指揮し、起訴してきた。 トランプ次期大統領は、復権すればスミス氏を「(就任から)2秒でクビにする」と発言していた。 CBSはスミス氏の計画を知る2人の話として、このタイミングならば、スミス氏は次期大統領や次期司法長官に解雇されずに職を辞することができると伝えている。 計画通りに行けば、スミス氏は自分が担当したトランプ次期大統領の刑事事件のどちらについても、公判を目にすることなく、辞任することになる。事件の一つは機密文書の不適切な保持の疑いに関するもので、もう一つは2020年大統領選の結果を覆そうとした疑いをめぐるもの。 スミス氏のチームは、大統領選でのトランプ候補の勝利を受けて、両事件は終了となったも同然だとして、関連業務を縮小しているとされる。 機密文書の扱いをめぐる事件では、トランプ次期大統領が政権1期目で任命したフロリダ州の連邦地裁の判事が7月、起訴は無効だと判断した。スミス氏が上訴している。 選挙妨害に関する事件は現在も手続きが続いている。ただし、司法省が現職大統領を在任中に刑事訴追することは、同省の方針上、認められていない。 ■最終報告書は出るのか 慣例では、特別検察官は捜査を終えると、最終報告書を出す。その中で、捜査の手順や起訴の可否についての結論を詳しく記す。 スミス氏がそうした報告書をメリック・ガーランド司法長官に提出するのかや、提出したとして次期大統領の就任前に公表されるのかは、まだ明らかではない。 BBCは司法省にコメントを求めたが、すぐには応答がなかった。 特別検察官の報告書は、法的措置に直結するものではない。それでも、公表されれば、世間に大きな影響を与えうる。 例えば今年夏には、ジョー・バイデン大統領の機密文書の保持をめぐって、ロバート・ハー特別検察官が報告書を公表した。この事件でバイデン氏は起訴されなかったが、高齢と認知機能に関して同氏に不利なことが書かれていたことが、大きく注目された。 ■特別検察官の辞任が意味すること 選挙妨害事件では、スミス氏はすでに証拠の多くを、裁判の提出書類として出すことで公表している。 トランプ次期大統領は、機密文書の扱いをめぐる事件と合わせ、どちらの裁判でも無罪を主張し、起訴は政治的動機によるものと訴えてきた。 そうしたなか、選挙妨害事件をめぐって連邦最高裁は7月、現職や歴代の大統領について、特定の「公的行為」については刑事責任が部分的に免責されるとの判断を示した。これにより、スミス氏は起訴内容を調整し直す必要が生じた一方、検察の主張を裏付ける証拠を出すことも認められた。 連邦地裁のタニヤ・チャトカン判事は、12月2日までに今後の手続きを決めるよう、スミス検事に命じていた。 スミス検事が辞任すれば、アメリカの刑事司法制度をめぐって、トランプ次期大統領が法的に勝利することになる。 次期大統領は2023年に4件の刑事事件で起訴されたが、そのうち裁判になったのはニューヨーク州の1件のみ。 不倫の口止め料支払いについて事業記録を改ざんしたとされるその事件では、次期大統領は34件の罪状で有罪評決を受けた。 しかし、今回の大統領選の結果を受け、その判決の行方さえも不透明な情勢となっている。次期大統領の弁護団は、大統領の免責特権を侵害しており、ホワイトハウスの職務に支障をきたすという理由で、有罪判決を覆すことを求めている。 (英語記事 Jack Smith plans to step down before Trump takes office)
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