日本初のファシリティドッグが誕生するまで【医療チームの一員! ホスピタル・ファシリティドッグ】
◇患者や家族の声に応え、活動広がる
ある日、ベイリーの活動を応援してくれる看護師が「今、〇〇ちゃんが処置室で採血しているから、応援に行ってあげて」と声を掛けてくれました。処置室に向かうと、ベイリーのことが大好きな女の子が泣いていました。その子は病気の影響で目が見えなくなってしまい、採血に対して強い恐怖心があり、いつもパニックになってしまっていました。 「隣にベイリーがいるからね」と言って、その子の手を取り、ベイリーの首に触れるようにして採血を始めたら、落ち着いて実施できました。この時のことは、14年たった今でも忘れられません。ベイリーはすごい力を持っていると、実感しました。 そのうち、中まで入れなかった病棟の子どもたちやご家族から「どうして私たちの病棟にはベイリーが来ないの?」という声が出てきました。その声に押されるように、これまで許可が出ていなかった病棟も、プレイルームまで入れるようになり、病室へと進み、さらにベッドでの添い寝や、処置の付き添いも依頼されるようになっていきました。 白血病などの病気の子どもたちは治療中に「骨髄穿刺(せんし)」という骨盤に針を刺す検査や、背骨の間に針を刺し、薬液を注入する「髄注」という処置を何度も行います。それらの処置は、あらゆる感染を防ぐため、とても清潔に行わなければなりません。 そのような場面にも、ベイリーは付き添いができるようになりました。繰り返す処置や処置室の雰囲気が怖くて自分では入れなくなり、薬で眠らせてから運ばれていた子が、べイリーと一緒なら自分の足で入れるようになりました。 「怖いけど、ベイリーが一緒なら頑張る」「ベイリーの目を見ると安心する。君の瞳には魔法の力があるよ」と言う子もいました。手術を受ける子どもとは手術室まで一緒に向かい、麻酔で眠るまでそばいることもできるようになりました。 治療について、周囲の人が無理矢理やらせるのではなく、自分から「よし、やろう!」と決断できるようになることは、治療を自分の事とし、前向きに捉える上で、とても意味のあることです。