睡眠障害に隠された病気 睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、うつ病…眠れないイコール不眠症とは限らない
Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」
こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に科学的見地からビシバシお答えします。 【図表】うつ病にならないためにやめておきたい七つのこと 「寝つきが悪い」「夜中に目覚める」「朝早く目が覚めてしまう」……このような不眠症状があるとついつい「不眠症になってしまった」と考えがちですが、実は他の病気が原因で眠れなくなっていることもしばしばあります。今回は不眠の原因についてご紹介します。ポイントは「不眠症状があること」イコール「不眠症」ではない、です。
成人の30~40%に不眠
寝つきが悪い(入眠困難)、夜中に目覚める(中途覚醒)、朝早く目が覚めて二度寝ができない(早朝覚醒)などの不眠症状(以下、不眠)は成人の30~40%にみられます。 ただし、不眠があっても日中に眠気や倦怠(けんたい)感、集中力の低下、うつ、イライラなどの不調がなければ、あわてずに様子を見ていても大丈夫です。例えば、リタイア世代になって夜中に一、二度目が覚めてトイレに行っても、日中に元気に過ごすことができているケースなどです。 ところが、不眠に加えて日中に心身の不調が起こるようになると要注意です。いったん不眠による不調が生じると長期化することが多いためです。このような不眠と日中の不調の両方を抱えている人は成人の10~15%います。 不眠で悩み始めると「不眠症」という病名が頭に浮かぶ方が多いと思いますが、「不眠があること」イコール「不眠症」ではないことに注意する必要があります。不眠は「発熱」や「痛み」と同じように「症状」であって「病名」ではないのです。肺炎でも熱中症でも発熱するように、不眠もさまざまな心身の病気や睡眠障害で出てきます。 実際、睡眠障害は不眠症も含めて約70種類ありますが、そのほとんどで不眠が出現します。不眠の原因となるその他の病気を除外診断した上で不眠症の診断は付けられます。そうすると、不眠の原因の過半数は実は不眠症ではないのです。