「日本海の孤島・渡島大島」の噴火…「降灰まみれの悲劇」に見舞われた松前を、さらに襲った10m超の「大津波」の正体
新たな火山島の出現は、島のでき方を知り地球の活動を知るための研究材料の宝庫です。そこには、ほかでは見ることのできない事象や、そこから伝わってくる地球のダイナミズムがあります。 【画像】津波の代表的なパターンを見る 2024年9月、伊豆諸島、小笠原諸島で津波注意報が出され、一時は騒然となり、実際、八丈島での80センチメートルをはじめ、伊豆諸島各島で津波が観測されました。とつぜん海の向こうからやってくる津波の要因とそれぞれのメカニズムについて、前回の記事*で紹介しました。 *「津波の要因とメカニズム」:これは、たしかに特定が難しい…不意をついてやってくる「火山で起こる津波」を起こす6つの要因と、あまりに「広範囲な影響」 国内外の特徴的な島について噴火や成長の過程での地質現象を詳しく解説した書籍『島はどうしてできるのか』。火山活動中の西之島をはじめ、多くの島の上陸調査を行い著者が、海域火山の特徴とメカニズム、その影響について解説します。 今回は、18世紀、徳川吉宗治世下の日本海側を襲った大津波。その原因となった、松前の沖合にある渡島大島(おしまおおしま)の噴火活動を取り上げます。 ※この記事は、『島はどうしてできるのか』の内容を再構成・再編集してお届けします。
火山はいつか崩れる
日本列島には富士山のように美しい円錐形状の成層火山が多く存在する。噴火を何度も繰り返し、しだいに山体を成長させてきた結果だ。 しかし砂山を高くしていくとある時突然崩れるように、火山は時に崩壊を起こし山容を大きく変化させることがある。ふだん雄大に構える姿からは想像し難いが、崩壊による変化もまた火山のひとつの姿といえる。 火山体の崩壊(山体崩壊)が発生する頻度は噴火と比べて低いが、ひとたび発生すれば甚大な災害を引き起こす。日本国内の火山災害のうち、火山島や海に隣接した火山の山体崩壊とそれに伴う津波によるものは歴史上最も深刻で、多くの犠牲者を出してきた。 日本列島には海域火山が多く存在するが、近年このような現象は幸いにも発生していない。しかし17 ~18世紀の江戸時代には山体崩壊と津波による災害が複数発生し、歴史の中にそのすさまじさが記録されている。 山体崩壊はどのように発生し、どのような現象が起こるのか。今回の記事では、渡島大島(おしまおおしま)で1741年に起きた山体崩壊と津波について、著者の上陸調査の記録を交えながら探っていこう。
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