新型コロナと少子化で閉院も 小児科医療が直面する危機
今、都筑区の小児科系の診療所は40軒以上あるが、15歳未満の年少人口は2010年から2020年の10年間で5463人も減っている(横浜市政策局)。ここ数年は横浜市医師会が運営する診療所での休日の急患診療でも患者が大幅に減ってきており、さらに、区内の開業医が交代で担当する区の乳幼児健診でも来場者が半数近くに減ることもあった。 日本全体をみても、1980年の年少人口は2751万人だったが、2020年は1512万人で過去最少となった。患者が少なくなれば、医療の需要も減る。 子どもが多い地域も安泰とは言えない。例えば東京都の年少人口は2001年以降、微増してきた。それに伴い、都の診療所で働く小児科医師数も十数%増えた。ところが、2021年には年少人口は減少に転じている。
新しい役割の創出が必要
地域の小児科医が危機感を募らせる要因は少子化のほかにもある。その一つは予防接種の普及で急性の感染症の病気が激減し、小児科医の役割が縮小しつつあることだ。 千葉市緑区のまなこどもクリニック院長で、千葉市小児科医会会長の原木真名さん(58)は、「自分で自分の首を絞めるような話なんですが」と前置きしつつ、普通のウイルス性の風邪は診療所に来なくても家で安静にしていれば、いずれ治ることが多いと話す。また、今は一般的な感染症の重症化も予防できる時代になり、緊急性の高い病気の子を診る機会も減った。同院では、子育て支援や発達の相談に、より力を注いでいるという。 「自分たち小児科医は立ち位置を変えないと、存在意義がなくなってしまうと思います。以前は小さいお子さんが熱を出すと、医師はまず細菌性の髄膜炎(脳や脊髄を覆う髄膜の炎症)を警戒したものです。かかると、あっという間に重症化しやすいからです。日中、自院で診たお子さんが、夜中に痙攣を起こして救急で運ばれ、入院後に亡くなってしまう。そんなケースはある一定の年齢以上のドクターの多くが経験しています。けれども2013年から細菌性髄膜炎を防ぐヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンが定期接種になりました。それ以降、お子さんが重症化することは極めて稀になりました」