第93回選抜高校野球 市和歌山、遠い1点 スタンドから温かい拍手 /和歌山
<センバツ2021> 第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は26日、2回戦で市和歌山が明豊(大分)と対戦し、1―2で惜敗した。先制された後に一度は追いつく粘りを見せたが、リリーフしたエース小園健太投手(3年)が追加点を奪われ、試合をひっくり返すことはできなかった。選手たちの健闘にアルプススタンドからは温かい拍手が送られた。【橋本陵汰、中田博維、中島昭浩】 先発したのは2年生の米田天翼(つばさ)投手。初回、いきなり先頭打者に二塁打を打たれるが、落ち着いて後続を打ち取った。「(捕手の)松川さんの要求通りに真っすぐを思い切って両コーナーに投げ分けられた」と振り返る。 三回まで無失点の好投を見せたが四回、先頭打者に本塁打を浴びた。1死一塁となり、ズルズル崩れそうなところで松川虎生(こう)主将(3年)がマウンドに。「この後の打者を絶対抑えて、切り抜けるぞ」。力強い励ましに「気持ちが楽になった」と米田投手。注文通りのダブルプレーで相手に流れを渡さなかった。 大舞台で堂々の投球を見せる米田投手に、母瑞緒さん(47)は「抑えてほしいとドキドキした。初めての甲子園でよく投げた」と拍手を送った。 五回からはエース小園健太投手が登板。「米田がとてもいい投球をしてくれた。流れを引き寄せようとマウンドに立った」と話す通り、先頭打者をいきなり三球三振。この回を三者凡退に抑えてみせた。 小園投手の投球に応えたのは、長く一緒にバッテリーを組んできた松川主将だった。六回2死二塁、「甘く来たら初球から絶対仕留めてやると思っていた」という、その初球を中前にはじき返した。二塁走者が生還して同点。スタンドでは野球部員たちが激しくメガホンをたたいて大喜び。松川主将の父倫久さん(43)も「1回戦はチャンスで打てなかったのでホッとした」と笑顔を見せた。 直後の七回表、小園投手が2死三塁からタイムリーを許す。市和歌山もチャンスは作ったが、1点が遠く、力尽きた。 ◇応援旗で戦う ○…スタンドの最後列、市和歌山の応援旗を各回交代で持ち続けたのは、野球部の寺田椋太郎選手(2年)と森大輔選手(同)の2人だ。重さは約15キロ。試合終了までの約1時間45分、立ったまま持ち続けた。スタンド上段は風も強く、「すごく重たい。でも選手のみんなが頑張っているから」と寺田選手は歯を食いしばっていた。森選手は「自分たちも一緒に戦っている姿を見せたい」と旗を握る手に力を込めた。【橋本陵汰】 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇「今までで一番楽しく」 松川虎生主将(3年) 初回、先頭打者にいきなり二塁打を打たれたが、2年の米田天翼(つばさ)投手を巧みにリードしてピンチを切り抜けた。四回、先頭打者に本塁打を打たれた時はマウンドまで行き、「1点ぐらい俺が打ち返すから」と励ました。 その言葉通り、六回2死二塁、「ここぞで回ってきた」というチャンスで同点の中前打を放つ。1回戦ではチャンスに凡退したが、この日は勝負強さを披露した。 七回に勝ち越しを許し、センバツは2回戦で去ることに。それでも「今までで一番楽しく野球ができた」と初めての甲子園を振り返る。 1、2回戦と点が取れなかった。「チーム一丸で打撃を磨いていく。夏は絶対に戻ってきたい」。最後の夏に向け、力強く語った。【橋本陵汰、中島昭浩】 ……………………………………………………………………………………………………… 明豊 000100100=2 市和歌山 000001000=1