「クロダイがアサリを食い尽くす!?」俳優・松下奈緒さんも参加した、知ることからはじめる食害対策
被害を実感することからはじまる、クロダイ対策
この日訪れたのは、千葉県木更津市にある畔戸漁港。地元のアサリ漁師たちが集まり、クロダイの捕獲と、胃の内容物調査を行った。 迎えてくれたのは、活動を主導する新木更津市漁協の金子誠一監事。「漁協のアサリ漁師たちは、アサリの漁獲減に悩まされてきました。浅瀬のほうには噛み砕かれた後のアサリの貝殻の破片なんかが流れ着いていて、単純に数が減っているのではなく『食い荒らされている』という印象だった」と話します。 原因は、すぐに推測できたという。
「アサリの食べられ方や、この地域の生態系から"クロダイが原因だ"とわかりました。ただ、漁師たちがすぐに対策に乗り出そうとするのは難しい。時間と労力をかけてクロダイ対策をしても、本当に意味があるのか?と考えてしまう」と語る。 漁師たちにとって、不漁の原因をつきとめ、対策をしている時間は稼ぎがないことと同じ。クロダイを漁獲することで売上に繋がるのであれば一時の収入にもなるはずだが、木更津市をはじめ千葉県や関東の市場では、クロダイは食用として流通されることも少なく、値がつかないため儲けにはならない。 漁師たちの生活のためにも、「クロダイ対策に費やした時間が、将来のアサリ漁にとっていい影響をもたらす」という確信が必要だった。
「だからこそ、まずはクロダイが何を食べているのか、どんな量を食べているのかを調査して、被害を実感するところからはじめたいと思ったのです」と金子監事は話す。 こうして新木更津市漁協では2023年4月から、東京湾漁業研究所の指導のもとにクロダイの捕獲調査に関する計画を作成。「研究所の調査に協力する」という形で、漁師たちの活動ははじまった。
「海苔と貝が、こんなに」クロダイの胃の中を知る
調査のため、クロダイの捕獲をはじめる漁師たち。河岸で待つ松下さんを振り返りながら、「ちゃんと獲って、見てもらわないとな」と意気込む。 クロダイが生息するはずの河岸に網を投げ込み、追い込む形で漁は行われた。地元漁師たちは次々に網を投げ入れ、クロダイがかかるのを待つ。 川岸に沿うように網を張り、水草のかげや木陰近くの水面を叩いて音を出すと、逃げるようにしてクロダイが網にかかった。