関学大負傷QBが復帰戦後に騒動に巻き込まれた苦悩と宮川君への思いを語る
6日の日大との定期戦でパスを投げた後の無防備な状態で後ろから危険なタックルを受け腰と左足に全治3週間の怪我を負った。本人は「何が起こったかわからなくて気づいたら膝と腰を痛めていた」と振り返る。 1週間前に練習を再開、3、4日前に先輩QBから「後半からいくかもしれないから準備しておいて」と伝えられ「思い切りやろう」という気持ちになった。 まだ左足にはテーピングが巻かれ「多少、左ひざに痛みはあり不安もあった」というが「怪我のことは考えずにプレーしよう」と集中した。 「自分の中ではよくプレーできたと思う」 この試合、奥野は後半にフル出場し、9度パスを投げて7度成功。獲得ヤードは127ヤードを誇った。 関学大のオフェンスラインが素晴らしいパスプロテクトを演じたこともあって奥野がタックルを受けるシーンは一度としてなかった。ヘルメットを脱ぎ、横一列に整列してスタンドに挨拶をしたとき、大きな拍手が湧いた。その中には、被害届を出すと同時に宮川選手への寛大な処置を求める嘆願書運動をしている父の康俊さんの姿もあった。その父は「もう言葉にならないくらい感動しました。元気な姿を見られて良かったです。涙がこみ上げてきました。応援して頂いた皆様、本当にありがとうございました」とのコメントを発表した。 試合後、奥野の記者会見はフィールド内で行われた。テレビ取材が5分、ペンの囲み取材が5分の制限がつく中、テレビ取材では顔を映すことが禁じられた。数日前に奥野と、その家族への脅迫があり、今人物が特定されることへの危険があったからだ。またプレー映像や写真撮影においてモザイク処理をすることへの自粛願いもあった。まるで犯罪者のようなイメージが植えつけられることを避けるための正しい取材制限だ。 まだ19歳の奥野は、少し緊張しているように見えた。それはそうだろう。何台ものテレビカメラが向けられ、黒だかりのメディアに囲まれたのだ。それでも奥野は自分の言葉で力強く語った。 ――今日のプレーを振り返ってみて下さい。 「怪我の不安はあったのですが、意識せずに、練習できなかったときの頭の整理を生かした。相手のディフェンスを見て落ち着いてプレーができたと思います」 ――フィールドに立ったとき、特別な思いはありましたか? 「特別な思いはなく、自分が出たときに、いつも通りやろうと思っていました」 ――タックルへの恐怖心はありましたか? 「あのタックルは本来、起こらないプレーなので、タックルに対する恐怖心はなかったです」