新型コロナ再流行は? 緊急事態の再宣言は? 専門家会議が語ってきたこと【#コロナとどう暮らす】
●「次なる感染の波」は来るのか
懸念されている新型コロナウイルスの「新たな流行」の波は来るのでしょうか。専門家会議は、5月14日の「状況分析・提言」の中で「残念ながら、再度の感染拡大が予想される」と記したように、再三にわたって再流行の恐れを警告しています。また、このウイルスへの対応は「長丁場となることが見込まれる」とも注意を促しています。 米ハーバード大学の研究チームは、今後の医療崩壊を避けるためには、人と人との距離をとる「ソーシャル・ディスタンス」といった措置を「2022年まで断続的に維持する必要があるかもしれない」とする予測を発表し、日本でも報じられました。 専門家会議では、中国由来の感染拡大を「第1波」、次の欧米由来の感染拡大を「第2波」と定義していますが、次の「第3波」も見据えた対策が不可避だといえます。同会議が、コロナとともに生きることを前提とした「新しい生活様式」を提言したことは記憶に新しいでしょう。 29日の「状況分析・提言」でも「今後想定されうる流行シナリオとして、潜在化している感染連鎖が 突如としてクラスターとして顕在化するようなケースや、これまで報告されてこなかったようなタイプのクラスター感染(集団感染)、海外から人とともに病原体が持ち込まれることによるクラスター感染の発生などにも十分注意していく必要がある」としています。
●再指定は4月の状況より「早く」
日本で再び感染の流行が見られた場合、安倍晋三首相は「残念ながら2度目の『緊急事態宣言』発出の可能性もある」と5月25日の会見で言及しました。 ただ仮に、もう1度「緊急事態宣言」を出す場合には、最初に出した4月7日の感染状況より「早いタイミング」で再指定する必要があると専門家会議は指摘します。 専門家会議が5月14日に出した「状況分析・提言」では、想定される今後の流れを、以下のようなイメージで説明しています。 (1)「緊急事態宣言」発出(2)「宣言」解除(3)低いレベルでの感染の増減(4)再度の「緊急事態宣言」発出 これはあくまで「最悪の事態を想定」(尾身氏)した仮定のものであり、実際に今後「再宣言」があると決まっているわけではありません。 感染状況が下火になった後も「小さな山がまた何度か繰り返してくるということは、当分覚悟をしておいた方がいい」(尾身氏、4月17日の首相会見)と専門家は指摘します。そのため「緊急事態宣言」の解除以降も(3)のように「宣言」を出すほどではない程度の感染者の増減が予想されます。実際、海外の国々でも、行動制限を解除した後に感染の再拡大が起こった例が報告されており、日本でも「宣言」解除後に北九州市や東京都でクラスターの発生が確認されています。 感染再拡大の予兆が見られる場合には、まず都道府県知事が「自粛要請」などの対策をとります。「宣言」が出る前の3月後半に各知事が外出自粛を訴えたイメージです。しかし、そうした感染の小さな山の後、もしかしたら再び感染が急拡大する状況に陥るかもしれません。医療崩壊の危機が再燃したり、クラスター対策が維持できるレベルを超えたりしそうな場合には、(4)のように政府が再び「緊急事態宣言」を出すことになりますが、その際には、4月に出したタイミングよりも早く発出する必要があるといいます。 「緊急事態宣言」の再指定には、どのような指標が考えられるのでしょうか。専門家会議は、▽直近1週間の人口10万人あたりの累積報告数▽直近1週間の倍加時間▽直近1週間の感染経路不明の症例の割合のほか、実効再生産数などの数値を参考にすると明らかにしています。ただ具体的な数値は「あえて出さない」としています。 その理由について尾身氏は、その頃には抗原検査が普及している可能性があり、現在と前提条件が変わっているかもしれないこと、さらに数値基準を低く設定すると頻繁に「緊急事態宣言」を出すことになり、社会・経済に混乱をきたす恐れがあるためだと説明しています。14日の専門家会議の「状況分析・提言」でも「数値のみによる一律の判断は避ける必要がある」と記しています。