“BIGBOSS”新庄の前で打撃投手を務めた元日ハム斎藤佑樹さんが現役最後に挑戦していた画期的試みとは…肘にメスを入れない治療法
2つ目は、多血小板血漿療法(PFC-FD)。これは、すでに紹介したPRP療法の一種で、3つ目が、出力をコントロールし、多めに投げるリハビリテーション。昨年のキャンプは、まさにその過程にあった。 馬見塚さんは「投球障害リスクの一つである投球強度をうまくコントロールしながら投げていただいた」と話し、セミナーでは、その運動を自動化するため、ボールの球速、回転数、縦横の変化量、回転効率などが分かるラプソードを利用しながら、キャッチボールを行う映像も公開されている。 治療法そのものは、数年前からアマチュア選手に対して施しており、馬見塚さんはある程度の手応えを掴んでいた。だが、斎藤さんのようなプロアスリートに対しては初めて。そもそも馬見塚さん自身が、「まだ、亜鉛治療と治療成績の因果関係を証明する証拠が不十分」と認める治療法ではあったが、なぜ斎藤さんはその道を選択したのか。 その問いに対する答えは、ジョンと同じだった。 「それしかない、というところもありました」 ジョンに話を戻すと、「本当の試練は、リハビリだった」と過去のインタビューで答えている。 途中、神経のダメージを修復する手術を受けるなどしたが、スローイングプログラムにしても、手探り。日曜日はノースローだったそうだが、「神も日曜は休む。私もそうすべきだと思った」とジョン。そこに科学的な裏付けはなかった。 斎藤さんにとってもリハビリは、一つの試練だったという。 「メスも入れていないし、すごく簡単に言ったら、栄養や生活習慣の改善、そして注射を打っただけなので、肘への負担はあまり感じていない」 それよりは、受け入れられるかどうか。その周りの目。 「100球、200球と投げていく上で、きっと見ている身近な人の中では、『大丈夫かな?』っていう、もしかしたら心の中で批判の声もあったかもしれません」 しかし、信じたことを貫いた。 「やっぱり僕の選択肢としては、それしかないって思って進んできた。もしかしたら、1年目、2年目の選手だったらできなかったかもしれない。11年目の僕だからこそ、できたのかな、というところもありますね」