“BIGBOSS”新庄の前で打撃投手を務めた元日ハム斎藤佑樹さんが現役最後に挑戦していた画期的試みとは…肘にメスを入れない治療法
知り合いの外科医らにも意見を求めたところ、復帰できる確率は1~2%と言われたそう。しかし、先ほど紹介したCNNのインタビューでは、こう話している。 「私は高校時代、クラスの卒業生総代だった。1~2%というのは、0%よりもはるかに高い確率だということは分かっていた」 手術を受けなければ、引退。手術を受ければ、野球を続けられる可能性が残る。その時まだ31歳。迷いはなかった。 2020年10月に右肘を痛めた斎藤さんも、右ひじ内側側副靱帯の断裂という診断結果を告げられると、似たような状況に置かれた。 当初示された選択肢は2つ。靭帯の再建手術か、保存療法か。しかし、手術を受けると、「1年間休むことになってしまうので、その選択肢はなくなる」と斎藤さん。20年は1軍での登板機会がなく、もはや猶予はなかった。かといって、自身の血液の血小板が多く含まれる部分(血漿〈けっしょう〉層)を抽出したのち、自己多血小板血漿を作製して患部に注入するPRP療法を柱とした保存療法も、斎藤さんのような完全断裂のケースでは効果が期待できなかった。 選択というのは通常、両者のメリット、デメリット、リスクを比較しながら、決してベストではなくても、ベターな方を選ぶことを意味する。ところが、分かれ道からさほど遠くないところで、いずれの道も塞がれていたのだ。 ただ、そこに道らしき道はないものの、その先にゴールがうっすらと見えるーーそんな治療法を、ベースボール&スポーツクリニック(川崎市中原区)の馬見塚尚孝医師が提案した。 それはどんなものだったのか? 先日、「2022年第1回野球医学セミナー」がオンラインで開催され、そこで行われた斎藤さんと馬見塚さんの対談の中で、その新たな治療法の具体的な内容が明かされた。 柱は3つ。まずは、栄養指導・生活指導だ。 馬見塚さんは、「採血検査で亜鉛欠乏を示した斎藤さんに亜鉛製剤処方と亜鉛を多く含む牛肉、牡蠣、レバーなどの摂取推奨を行った」と話し、続ける。 「亜鉛を含む酵素は亜鉛酵素と呼ばれ、傷んだ靱帯の修復に関係しているのではないか、ということが最新の研究で分かってきた」 その上で、睡眠時間の管理など生活面の改善を指導したそう。