最善か無か……中間か メルセデス・ベンツ 新型Eクラスが日本上陸
メルセデスベンツEクラスは、いつの時代にも安心して訪れることができる、老舗洋食屋のハンバーグのような車であってほしい。
かつてはS123、S124 を長年所有し、現在はS213を日々愛用している大林晃平は、期待と希望をこめて新型メルセデスベンツ W214 Eクラス試乗会の行われている千葉県ブリストルヒルゴルフクラブへと赴いた。新しいEクラスはどんな仕上がりだったのだろうか?
もうあの優しい笑顔を見られなくなってずいぶん時が流れてしまったが、かつて川上完さんが言われた台詞を忘れられない。「自動車がモデルチェンジしたら、良くなってなくっちゃおかしいよ。何のために新しくしたのか意味ないもの」この言葉を聞いた時、たしかにそうだと思うと同時に、でもそうじゃないフルモデルチェンジも多いから困ったものですよね完さん、という話になったことも覚えている。あれは確かメルセデスベンツ W222 Sクラスの試乗会から完さんが帰ってきた直後のことだった。
フルモデルチェンジをしたというのに自動車の完成度や魅力が下落してしまう場合、考えられる要因はいくつかある。それはコスト削減であったり、誤って設定された企画やコンセプトの場合もあるが、なんらかの理由で開発に十分なエネルギーが注がれなかったり時間切れだったりが原因の時も実は多い。残念ながら最後の理由は最近のドイツ車などに比較的みられることがある現象で、車種の著しい増加やBEVの同時開発などによって明らかに人の手が足りず、未成熟のままマーケットに出てくることが珍しくない。
もちろん以前にも、フルモデルチェンジされたばかりの最新モデルよりも、フルモデルチェンジされる直前の熟成されたモデルこそが買い時、と言われたことは知られているが、その傾向はまずます強くなるばかりか、時間を経ても改良されないまま消えていってしまうモデルもあるから困りものである。
さてメルセデス・ベンツの場合、現行SクラスであるW223は、特にS400dなど最初からそれはそれはまごうかたなきメルセデスベンツで、濃密で底が厚く、とろとろな感じのこれぞメルセデスベンツSクラスな一台であった。ひとつ前のW222も後期モデルはとっても良かったが、このW223は同等かそれ以上の乗り味を持っていると思う。