トランスジェンダーの女子プロレスラー朱崇花 「彼女は…」って当たり前に呼ばれたい
恋愛体質だけど恋愛に向いてない?ジレンマ
肉体的には男性だが心は女性として生まれた朱崇花。体も一部手術を終えているという。 「日本でジェンダーレスの意味を理解している人はあまりいないと思うし、どう受けとめるかは個人の勝手だから、ニューハーフって思われてもゲイって思われてもいい。でも私はあくまで女性なので普通に女性として生きていて、その姿勢を見せてはいるつもりです」 恋愛対象は男性だ。好きなタイプを聞くと、都度変化があると笑う。 「レスラータイプよりはジャニーズとか王道イケメン。山田涼介さんとか。ただストライクゾーンは広めです。恋愛経験を聞かれるとどれを話せばいいのかってぐらい恋愛体質で(笑)。ただ恋愛に向いていないんです。一人が好きだし相手に合わせたくない。わがままで、一緒になる男性は迷惑だろうなって。そう思うと付き合う必要ないかなとも思うけど、一方ではすごい寂しがり屋。恋もしたいですけど向いてない……ジレンマですね」 人を好きになると、プロレスラーをやめたくなることもあると明かす。 「結婚も考えたいなと思うときもあって、揺らぐことはある。体も全部女性に変えたいなって。ただ、そうなると入院期間とかリングに上がる体をつくる期間とかもあるし欠場期間は年単位になるので、今はやっぱり自分の気持よりも仕事を優先です」
『彼は』じゃなく『彼女は』 当たり前のことをちゃんと言われたい
ホルモン注射を打ちながらリングに上がる困難もある。 「ホルモン注射はレスラーとしての体を維持することと矛盾するんです。よく『男が女と戦って勝てないわけないだろ』とか言われるんですけど、ホルモンバランスも崩れてるし胸もふくらんでいて痛いし、吐き気とか頭痛もある状況のなかでリングに上がっているんです。『男が女と戦って勝てないわけない』なんて一言で片付けられちゃうと、いやいや違うんだけどなって。SNSって書き放題だけど、人それぞれの考えとか意見、気持ちがある中でそこに口出ししたりとかこれ違うじゃない?とか固定観念を押し付けるのはセンスないからやめたほうがいいよって」 今後は、世界を見据えて活躍をしていきたいと目を輝かせる。 「日本での活動は割とやりたいことはかなえて足場も固めてきたし、海外で試合もしています。今は海外で結婚したい、子どもが欲しいとか、そういうほうに目を向けている感じですね。日本のファンの方にはずっと支えていただいて申し訳ない気持ちですが一個人としては海外へ目を向けています」 そう思う背景には、何があるのか。 「日本ではジェンダーレスにしても一括りにされる中で、いやいや私はこうですって主張するのも疲れてきたなというのが本心で。わかってくれる人もたくさんいますが、私はやっぱり『彼は』じゃなくて『彼女は』って当たり前のことをちゃんと言われたい。そう考えると海外で活動したほうが結婚もできるし気持ち的に楽かなと。人それぞれ個性とかいろんな生き方がある、それをこれからも伝えたいです」 デビュー8年目に突入する彼女の、これからを見守りたい。 (写真と文・志和浩司) ■朱崇花(あすか) 1998年宮城県出身。小学3年生からレスリングを始め、小学6年生の時にはレスリング全国3位の成績を記録。推薦入学した高校を自主退学し、2015年8月に日本人で初めて性同一性障害を公表したプロレスラーとしてデビュー。現在はフリーとしてさまざまな団体のリングで活躍中。試合情報は自身のツイッターなどで発信している。