10試合34ゴールでJ1新記録の10連勝…川崎フロンターレ無敵の得点能力のなぜ?
真夏の太陽が容赦なく照りつけるグラウンドでは元日本代表のMF山村和也やMF齋藤学ら、セレッソ戦のベンチ入りを果たせなかった選手たちが大粒の汗を流しながらランニングしていた。 「試合に絡まない選手たちがあれだけ頑張っているのを見て、試合に出る選手がやらないわけにはいかないと思いました。マナブ(齋藤)やヤマ(山村)たちの姿を見て(セレッソとの)試合に勝てると思ったというか、それぐらいチームの全員が試合に出るために必死になっている。誰一人として現状に満足していないことが、いまの結果につながっていると思っています」 3ゴールをあげていたドリブラー、長谷川竜也が故障離脱していても、齋藤らがベンチ入りできないほど今シーズンのフロンターレは選手層が厚い。新型コロナウイルスによる中断期間中に2人の大卒ルーキー、FW旗手怜央(順天堂大)とMF三笘薫(筑波大)が完璧にチームへフィットしたからだ。 ともに東京五輪世代である2人は、同時に先発したことはない。どちらかが先発すれば、どちらかがライバル心を燃やす。セレッソ戦でも旗手が先発し、三笘が後半16分から投入されている。チームの勝利を目指しながら切磋琢磨するなかで、30分には三笘が試合を決める4点目を奪った。 前線の小林へ縦パスを入れると、そのまま相手ゴール前へスプリント。小林のリターンを受けると迷うことなく右足を振り抜き、リーグ戦で3試合連発となる3点目、YBCルヴァンカップを含めれば公式戦で5戦連発となるゴールでセレッソに2点差をつけ、戦意を半ば喪失させた。 リーグ戦では無得点の旗手も、ルヴァンカップではゴールを決めている。鬼木達監督は「競わせている感覚はないんですけど」と苦笑しながら、チームへ刺激を与えるルーキーに目を細めた。 「切磋琢磨を意識させなくても彼らの向上心は目に見えてすごいものがあるので、自分とは関係のないところで成長してくれていますよね」 旗手と三笘が成長した効果は、選手層が厚くなっただけにとどまらない。下から突き上げられた攻撃陣は競争意識を煽られ、さらに再開後のすべての試合で「5」に増えた交代枠をフル活用している鬼木監督のさい配のもと、夏場の連戦で疲労を蓄積しない状況をも生み出している。 「オニさん(鬼木監督)が上手く選手を代えながら、コントロールしてくれている。(主力を)固定しているチームが多いなかで、ウチの前線の選手は90分間出る選手がほとんどいない。なので、次の試合に疲れを残すことなく、しっかりと回復して臨めていることが大きい」 チーム全体のコンディションのよさをこう振り返る小林は、セレッソ戦で決めたゴールが先発として初めてあげたものだった。三笘のゴールの2分後には、同じく途中出場のFWレアンドロ・ダミアンがとどめの5点目を決めている。怒涛の攻撃に、ロティーナ監督は唸るしかなかった。