鹿島が4人の高卒ルーキーパワーで神戸と執念ドロー演出
先制、勝ち越しと味方の2ゴールをお膳立てし、勝利を託して後半37分にベンチへ下がったヴィッセル神戸の司令塔、アンドレス・イニエスタがぼう然としている。無理もない。試合終了まで1分を切っていた土壇場で、鹿島アントラーズに2-2の同点とされてしまったからだ。 県立カシマサッカースタジアムで16日に行われた明治安田生命J1リーグ第10節。奇跡の同点ゴールはともに後半28分から途中投入されていた高卒ルーキー、FW染野唯月(福島・尚志)とMF荒木遼太郎(東福岡)がペナルティーエリア内で見せた、不敵にも映る冷静沈着さから生まれた。 右サイドバックに入っていたゲームキャプテン、永木亮太があげたクロスがヴィッセルの最終ラインにはね返される。ペナルティーアークのあたりで、素早くこぼれ球を拾ったのは荒木。しかし、体勢を崩し、さらに相手数人に囲まれかけていた状況から、味方へのパスに切り替えた。 目安が4分と表示されていた後半アディショナルタイムは、この時点で3分を回っていた。しかし、荒木の言葉を聞く限りは、焦りの類をまったく感じていなかったことがわかる。 「あのときは自分がちょっと遅れて(相手ゴール前に)入って、こぼれ球が来るかなと思ったら本当に来て。最初は自分でシュートを打とうと思ったんですけど、打てないと思って」 荒木からパスを預けられたのは、右側をフォローしてきたボランチのファン・アラーノ。このとき、ペナルティーエリア内の右側にいた染野はゴールとは逆方向へと素早くポジションを移し、なおかつゴールに背を向けた体勢でアラーノからの縦パスを呼び込んだ。 左足でボールを止め、時計回りとは逆に身体を回転させながらしっかりと顔をあげる。この間にベルギー代表DFトーマス・フェルマーレンに、シュートコースが塞がれている状況を察知したのだろう。味方へのパスに切り替えた染野の選択に、アントラーズのザーゴ監督が試合後に思わず唸った。 「普通ならばあの状況ではシュートを狙うが、冷静に荒木を見ていた」