10試合34ゴールでJ1新記録の10連勝…川崎フロンターレ無敵の得点能力のなぜ?
同点とした前後からフロンターレはピッチ上でプレーする選手たちの自主的な判断で、システムをそれまでの[4-3-3]から[4-4-2]へスイッチしている。中盤を厚くすることでボールポゼッションをより高め、左右のサイドバックの攻め上がりを促した修正が前半42分に奏功した。 脇坂のクロスに抜け出した右サイドバック山根視来が、ゴールライン付近で意表を突くヒールパス。これに反応したFW家長昭博を、ペナルティーエリア内で丸橋が倒してしまった。 「ゲームの流れを見ながら自分たちでポジションを変えて、流動的にプレーすることがいつもできているので。その形が上手く2点目、山根選手が背後を取るシーンにつながったのかな、と」 セレッソを逆転するPKを家長が確実に決めたシーンを脇坂がこう振り返れば、堅守を誇る相手に先制される苦しい展開を2つのセットプレーでひっくり返したチームメイトたちの戦いぶりに、エースストライカーの小林悠の脳裏には万感の思いが浮かび上がっていた。 「前半から前へ(ボールを)取りに行きながら、上手くはまらなかった時間が多かったなかで、セットプレーで取れると本当に楽になる。強いチームになってきた、と思いました」 リードを奪われた相手は、前がかりにならざるをえない。そうなればパスワークと個人の多彩なテクニックが融合されたフロンターレの矛が、セレッソの盾へ次々と風穴を開ける。後半8分。前節の北海道コンサドーレ札幌戦でクラブの歴代最多得点者となった小林が、通算ゴールを113に伸ばした。 後方からMF大島僚太が送った浮き球の縦パスを、ゴール前へ侵入してきた小林がヘディングで家長へ落とす。ここで攻め込んできたのは左サイドバック登里享平。しかし、なかなかシュートにもち込めない状況で、ボールが左側にいた小林の前に転がってきた。小林の準備は整っていた。 「アキ君(家長)がノボリ(登里)に繋いだなかで、こぼれて来るかなと思って。まあ、これ(ポジショニング)だけでゴールしてきたようなものなので、いい位置にいられてよかったです」 角度があまりない位置から痛烈な弾道を放ち、得点ランキングで3位タイ、日本人選手に限ればトップの7ゴール目をあげた小林はキックオフを数時間後に控えたこの日の午前中に、川崎市麻生区にあるフロンターレの練習グラウンドを散歩で訪れた。そこで見た光景に心を震わせた。