独完全移籍のFC東京DF室屋成がラストマッチで残した”置き土産”とは?
なぜかそこに背番号2がいた。FC東京を5試合ぶりの勝利へと導いた、FWレアンドロの決勝ゴールが決まった場面から時計を逆回転させていくと、持ち場を離れた右サイドバックの室屋成が敵陣の真ん中にまで侵入して、攻守を入れ替える大仕事を演じていることに気づかされる。 独ブンデスリーガ2部のハノーファー96への完全移籍が電撃発表されてから一夜明けた15日に、ホームの味の素スタジアムで名古屋グランパスと対峙した明治安田生命J1リーグ第10節。FC東京でのラストマッチを1-0の完封勝利で飾った室屋は、短い第一声のなかに万感の思いを凝縮させた。 「とにかく勝利で終われたことが、すごくよかったと思っています」 右サイドバックとして今シーズン10試合目、通算では108試合目となったJ1リーグ戦に先発フル出場。スピードとテクニックを兼ね備えたグランパスの左ウイング、マテウスとの攻防を繰り広げた室屋は武器でもある決断力とハードワークで、前半33分に生まれた先制点の起点になった。 グランパス陣内の左サイドで細かいパスを繋ぎ、タッチライン際を抜け出したアンカーの高萩洋次郎が内側へ切れ込んでいく。グランパスのボランチ、ジョアン・シミッチが必死にマークする状況を見ながら、逆サイドにいた室屋は最悪のケース、つまり高萩がボールを奪われた場合を考えた。 本来は高萩がいるはずの敵陣の真ん中には、司令塔ガブリエル・シャビエルがフリーの状態でいた。誰かがシャビエルをケアしなければいけない。もしシャビエルにボールが渡れば、十中八九の高確率でカウンターにつながるパスが供給される。最悪の展開を考えた矢先に、高萩がボールを奪われた。 シミッチがシャビエルへ縦パスを通そうとしたときに、真ん中へ絞っていた室屋はさらに加速。トラップの刹那に死角からグランパスの背番号10を厳しくチェックし、ボールをルーズな状態にした。 「あまり覚えていないんですけど、多少リスクをもちながら、最悪、カードをもらってもいいかなと思って中に絞って、守備をした結果がゴールにつながった。そこはすごくよかったですね」 素早くこぼれ球を拾った明治大学の後輩、ルーキーのMF安部柊斗からレアンドロ、安部、高萩、FW永井謙佑と細かいパスがテンポよくつながる。最後はペナルティーエリア内の左側でボールを受けたレアンドロが、ノーステップの体勢からゴール右隅を正確無比な弾道で射抜いた。