国と自治体に“英断”求めた分科会提言 国民は「辟易している」
●クラスター調査
会見で尾身会長は、感染状況をいったんステージ2までしっかり下げることが重要だと繰り返した。背景には、夏の“第2波”の流行では感染が十分下り切らなかったことへの反省がある。 「ステージ2になぜこだわるのか。まだ高いところで(感染対策を)解除すると、またぞろ上がってくる。第2波は1回下がったが、比較的高いところで維持された。それから上がったのが今の状況。(今回は)ステージの2までは最低行ってほしい」 今回の危機感には、忘年会や新年会、さらに帰省など人の動きや接触が活発化する年末年始が近づいている事情もある。「第2波のような下げ方ではダメ。もう少ししっかりと下げないと、正月休みが終われば社会活動が活発になるので感染を上向きにする力が働く」 医療機関、とりわけ保健所のクラスター調査機能のキャパシティオーバーへの懸念も指摘する。尾身会長が「辟易」との言葉とともに紹介した現状認識の中には「医療機関はコロナ診療と通常の医療との両立が困難になっている。都市部中心の保健所では『後ろ向きのクラスター調査』を行う余裕がない」との文言がある。 後ろ向きのクラスターとは「感染源を同定するという日本独自の調査」(尾身会長)で、感染者が「どこに行っていたか」など過去の行動をさかのぼることで、共通の感染源となった場所やその場所にいた濃厚接触者を突き止めるものだ。諸外国では新規に見つけた感染者を起点に濃厚接触者を洗い出して将来の感染者を探す「前向き」な調査が主流だが、日本ではその両方を行っているという。 しかし、感染者の急増が各地で続く中で「保健所が目一杯になって、クラスターが見つからないことも実態としてある」と日本の強みだとするクラスター対策の機能不全を憂慮する。
●国と自治体の連携
同時に強調したのが、国と自治体の連携の必要性だ。提言では「今まで以上に地方自治体にはリーダシップを発揮して先手を打ってほしい。国もそれを後押ししてほしい」と記した。 その地域の感染状況がどのステージに該当するかのステージ判断は、都道府県知事と国が連携して決めることになっている。前述の通り、分科会はステージ3相当の地域ではGo Toトラベルを一時停止することを求めているが、Go Toトラベルからの除外を検討する局面で国と自治体の間でボールを投げ合うようなケースもあった。 「政治的な判断もあるだろうが、各都道府県民、国民の命と暮らしがかかっている。今は特別な時代なので、今まで以上に同じ方向を向いてより合理的な決断をしてほしい」と国と自治体双方に求めた。 会見では、むしろステージ判断自体を専門家が主導する方が早いのではないかとの質問も出たが、尾身会長は役割分担の明確化を挙げて反論した。 「分科会(の役割)は対策を提案することで、実行するのは我々の仕事ではない。ここが専門家と政府の役割(分担)で、そのことが曖昧になったのが当初の専門家会議」 さらに言葉を強めて続けた。「ステージ3というのは、こういう状況を言うと(分科会は)ここまで示している。普通にやればステージ2なのかステージ3なのか分かるような書き方を(している)。自治体と国は、都道府県民・国民のために今まで以上の英断を、決断、判断をしてほしい」