約84%の隕石の起源を新たに特定 これまでの約6%から大幅に増加
宇宙から地球へと落下する「隕石」は、宇宙に出なくても宇宙のことを知ることができる数少ない手掛かりです。しかし、隕石の大半はその起源が特定されておらず、起源が正確に特定されているのはこれまでわずか約6%でした。 約4億6600万年前の地球に「環」があった可能性 史上2番目の大量絶滅の原因?(2024年9月24日) CNRS(フランス国立科学研究センター)、ESO(ヨーロッパ南天天文台)、カレル大学の3人の研究者が率いる国際研究チームは、小惑星同士が衝突した後に発生する破片の飛び散り方をコンピューターモデルで探索し、これまでに調べられている隕石の年代との比較を行いました。また、望遠鏡によって観測された、無数の小惑星の表面組成や公転軌道などの観測データとの比較も行いました。 その結果、隕石全体の約80%を占める「普通コンドライト」と、約4%を占める「炭素質コンドライト」について、起源となる小惑星の族(ファミリー)を特定することに成功しました。特に普通コンドライトのほとんど、隕石全体でも約70%を占める「Hコンドライト」と「Lコンドライト」は、ごく最近に起きたたった3回の小惑星同士の衝突で飛び散った破片に由来することが分かりました。 今回の研究により、既に知られているものも含め、全体の約90%の隕石の起源が特定されたことになります。これまではわずか約6%であったことを考えれば大幅な進歩です。また、普通コンドライトや炭素質コンドライトは、太陽系誕生時の物質を含んでいることから良く研究されていますが、今回の研究は、隕石のサンプルには大きなバイアスがかかっていることを示しています。宇宙には無数の小惑星があることを考えると、小惑星の接近探査や直接サンプルを持ち帰るサンプルリターンは、サンプルの偏りを無くすために重要な科学的調査であると言えます。
隕石の起源はわずか6%しか分かっていなかった
地球には毎日のように宇宙から天体が降り注ぎ、10個から50個ほどは「隕石」として地表に到達していると見られています。多くの隕石は、小惑星の一部が砕けて飛び散った破片に由来すると見られているため、隕石の破片の元となった母天体は、その大半が今でも宇宙にあると考えられています。 特に、隕石全体の79.4%(※1)を占める「普通コンドライト」と、4.4%を占める「炭素質コンドライト」は、約45億6000万年前の太陽系誕生時に母天体となる小惑星が形成された後、ほとんど変質していないと考えられています。地球で見つかる最古の物質よりも年代が古い物質も見つかっていることから、隕石は太陽系誕生時の情報を持つタイムカプセルと見ることができます。従って、隕石がどこからやってきたのかを知ることは、隕石というサンプルの情報にどの程度のバイアスがかかっているのかを知る上で重要です。 しかし、長年の研究にも関わらず、隕石の起源の特定作業は難航していました。起源と思われる小惑星は、火星と木星の間にある小惑星帯に位置すると考えられているため、小惑星探査機や望遠鏡で得られた観測データだけで絞り込みを行うのが難しかったからです。 このため、これまで起源が特定された隕石は「月」に由来する月隕石、「火星」に由来する火星隕石、および4番小惑星「ベスタ」に由来するHED隕石(※2)だけでした。これらはいずれも、熱や圧力による大きな変質を受けた隕石である「エイコンドライト(アコンドライト)」であり、太陽系誕生時の初期情報は消去されています。また、これらは比較的珍しい隕石であり、全てを足し合わせても隕石全体の6.0%(※3)を占めるに過ぎませんでした。