約84%の隕石の起源を新たに特定 これまでの約6%から大幅に増加
起源特定のシミュレーションを実行
CNRSのPierre Vernazza氏、ESOのMichaël Marsset氏、カレル大学のMiroslav Brož氏が主導する国際研究チームは今回、Nature誌に2本、Astronomy & Astrophysics誌に1本と、合計3本にまたがる論文を投稿しました。この3本の論文では、隕石全体の83.8%を占める、普通コンドライトと炭素質コンドライトの起源について説明しています。 研究で注目されたのは、隕石に刻まれた衝撃の年代です。小惑星は高エネルギーの宇宙線を受け、それ以外の作用では生じにくい珍しい放射性同位体を生じます。また、岩石を構成する元素も、崩壊して放射性同位体を生じます。放射性同位体は年代を測定するのに使えますが、小惑星同士の衝突のような熱が加わると蒸発してしまい、時計がリセットされてしまうものもあります。また、小惑星同士の衝突は無数の破片を生じ、大量の隕石を地球にもたらすため、この方法を使えば、隕石の起源となった小惑星の衝突年代が分かります。 また、地球の近くを通過する「地球近傍小惑星」や、落下が目撃された隕石については、物質の組成が分かるとともに、公転軌道も判明します。公転軌道を長期にわたってシミュレーションすれば、ここからも隕石の起源が推測できます。 これに加え、今回の研究では追加のシミュレーション研究も行いました。小惑星同士の衝突で生じた破片は、太陽放射の影響によって(※4)元の軌道を外れ、地球への衝突コースを辿りやすいと考えられます。地球で見つかる隕石の落下年代は、古くても数十万年や数百万年前という単位であることを踏まえると、小惑星同士の衝突があまりにも昔過ぎる場合、隕石の落下年代よりはるか昔に破片が枯渇してしまいます。 一方で、太陽放射の影響を無視できるほどの大きな破片は、公転軌道が大きく変化しないため、似たような公転軌道を持つ複数の小惑星のグループを作ります。これを小惑星の「族(ファミリー)」と呼びます。 今回の研究では、隕石の起源と考えられる小惑星族の候補が、衝突による分裂をいつ頃経験したのかを、小惑星や隕石から得られた公転軌道を元にシミュレーションしました。そしてこの衝突によって生じた破片を元に、地球に届く隕石の量を推測し、現在見つかっている量や割合と矛盾しないかどうかを調べました。