自分がイヤだったことをしてしまう…。教育や指導のストレスを軽減する3つのポイント
お子さんがいらっしゃったり、会社の部下に指導されたりする立場の方なら一度や二度は経験があると思いますが、相手が自分の思った通りに行動してくれなくて苛立ったことはないでしょうか。教育は「される側」だけではなく「する側」もストレスがたまりやすいものです。 【イメージ写真】指導や教育で心のコントロール力を発揮するための3つのポイント 自衛隊の元陸将で、陸上自衛隊幹部学校の学校長を務めていた小川清史氏が、教育で心のコントロール力を発揮しやすくするために意識すべき3つのポイントを紹介します。 ※本記事は、小川清史:著『どんな逆境でも、最高のパフォーマンスを発揮する 心を「道具化」する技術』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。 ◇経験に学ぶ者は「愚者」ではない 子どもの頃、親から「勉強しなさい」「部屋を片付けなさい」「家の中で騒いではいけません」「早く準備しなさい」などと叱られて、なんの不満も抱かずに、素直に親の言う通りに行動できた人はあまりいないと思います。 しかし、そういう人がいざ親になったときには、自分の子どもに「勉強しなさい」などと同じ叱り方をしてしまいます。さらに最悪なのは、「あなたのためを思って言っているのになぜわからないの」と、自分のやり方の悪さを相手が悪いように言って押しつけることです。 過去に自分が言うことを聞かなかったのに(そのやり方が通じないことは自分が経験済みなのに)、なぜ同じやり方を繰り返すのでしょうか。 また、今では上司の立場の方も、かつて誰かの部下だった頃には、上司の理不尽な命令でイヤな思いをした人もいるはずです。それなのに、いざ自分が上司になるとそれを繰り返してしまうことがあります。 過去に自分がそれをされて余計なプレッシャーを感じたり、ストレスや不満を抱いたりしたことがあるのに、なぜその経験を活かさないのでしょうか。 ドイツ(プロシア)の鉄血宰相ビスマルクは「賢者は歴史から学び、愚者は自分の経験から学ぶ」と言ったそうです。確かに偉大な言葉だと思います。 しかし、私は自分の経験から学ぶ者が愚者だとはけっして思いません。 自分の受けたイヤなことを次の世代で繰り返さないようにする(そのうえで相手が本当に役に立つ内容を実行できるようにする)には、自分自身の経験を活かした「知恵」がなければ難しいと思います。 自分が受けた理不尽な指導を思い出し、親になったときにそれを繰り返さないことが賢明な道であり、「自分の経験に学ぶ」ということではないでしょうか。 ◇植物を育てるように人も育てよう 「教育」(自分自身に対する教育も含む)で心のコントロール力を発揮しやすくするために意識すべきポイントは、大きく3つあると思います。 〇 急速な成長を期待しないこと植物を育てるときに、早く花を咲かせようとして、水や肥料をたくさん与えようとする人はいないと思います。茎を引っ張って早く伸ばそうともしないでしょう。 それは、植物を育てるのに「適度な水や肥料の量」があることを知っていて、水や肥料を与え過ぎると、逆にうまく育たないことがわかっているからです。ましてや茎を引っ張ると、根っこが抜けるか、茎がちぎれてしまいます。 しかし、なぜか相手が「人間」になると「適度」がわからなくなる人がいます。 部下や子どもにキャパシティオーバーの教育をしても、成長が早まるわけではないのに、それをしようとしたり、あるいは自分自身に対しても、キャパシティオーバーの課題を与えて、早急な成果を期待したりします。 例えば、適度な運動と食事量のコントロールで健康的に体重を減らそうとするのではなく、「(ダイエットに効果的だとどこかで聞いた)〇〇を食べるだけ」にしたり、食事量を急激に減らしたりするような極端なダイエットで早くやせようとしている人などは、まさにそれです。 あるいは、相手の性格や人間性まで根本から変えようとして、相手の人格まで否定する過剰な「教育」(本来「教育」と呼べるものではありませんが)をする人もいます。 それは植物を早く育てようとして茎を無理やり引っ張り、根っこを引き抜いてしまっているようなものです。これも植物に対してはそんなことする人はいないのに、相手が「人間」だとしてしまう人が少なからずいます。 植物を育てようと思えば、適度な水や肥料と日光が必要です。つまり、その植物が成長するのに適した「妥当なこと」をしなければなりません。あとはその植物自体の自然の力によって無事に成長するのを見守るだけでいいはずです。 しかし、なぜか「人間」相手だと、その「妥当なこと」ができなくなる人がいます。 他人に対しても、自分に対しても、即効性や急速な成長を求めて、短期間で成果が実感できないと、せっかくの努力を継続することなくやめてしまう人が意外と少なくありません。 自分自身も含めて「人間」を育てる際には「植物」を育てる意識で、急速な成長を期待せずにおこなったほうが、ストレスに振り回されることなく、心のコントロール力を発揮しやすくなります。