樋口恵子×下重暁子 歳を重ねたら避けられない<膝の痛み>。樋口「私の場合、なんと20年経ってから古傷が急に…」
総務省統計局が令和6年9月に公開した「統計からみた我が国の高齢者」によると、65歳以上の人口は3625万人と過去最多だったそう。高齢化が進むなか、92歳の評論家・樋口恵子さんと88歳の作家・下重暁子さんは「女性は75歳を過ぎると、医療のお世話になることがぐんと増える。75歳が老いの分かれ目」と語っています。そこで今回は、お二人の共著『90前後で、女性はこう変わる』から一部を、お二人の対談形式でお届けします。 【写真】樋口恵子さん * * * * * * * ◆膝痛は誰もが通る道。ならば、どうする? 下重 ある程度の年齢になると、体のあちこちに痛みが出るのも、致し方ないことですよね。仕事がら、肩こり、腰痛と長年つき合ってます。 樋口 私たちの世代は、わりと痛みに強い人が多いでしょう? 昭和一桁生まれは、我慢強いから。 下重 確かに我慢強いけれど、やっぱり痛みにだけは耐えられない。私は痛みに弱いんです。でもそれは、決して悪いことではない気がします。痛みを感じにくい人は、体になにかしら異変が起きていても、なかなか気づかなかったりするでしょう。 つれあいは、典型的なそのタイプです。若い頃に偏頭痛で悩んでいたら、つれあいは「頭痛ってどういうものなの?」と。要は鈍感なんです。一方の私は、ちょっとしたことで痛みを感じるので、不調に早く気づくことができます。
◆頼もしい助っ人 樋口 それだけ、ご自身の体調に敏感なんでしょうね。 下重 そうだと思います。小学校2、3年のときは結核で自宅療養してましたから。常に自分の体を観察していますし。 樋口 私は77歳のときに胸腹部大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)という大動脈が太くなり瘤(こぶ)のようになる病気に見舞われ、3個の瘤を人工血管に置き換える手術をしました。術後とにかく痛くて痛くて。あれは、正直つらかったです。恥ずかしながらお医者さんに「先生、痛い、痛い! 助けてくれぇ」などと泣きごとを言ってしまいました。 退院してからも、しばらく痛みが続いて。ベッドに横になって「痛いよ~、痛いよ~」と声を出していたら、猫がそばに来て、ざらざらの舌で手をそっと舐めてくれました。 下重 頼もしい助っ人(すけっと)ですね。私の場合、猫は失恋の痛みを慰めてくれましたが(笑)。 樋口 猫は優秀ですものね。でも当時の痛みは、猫のかわいさを上回っていました。
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