「無理しないで、逃げる」養老孟司から学ぶ、人生を楽に生きるためのヒント【和田秀樹対談まとめ】
『バカの壁』著者・養老孟司氏と『80歳の壁』著者・和田秀樹氏。記録的な大ヒット本を生んだふたりに共通する人生哲学をまとめてお届け! ※2024年5月掲載記事を再編。 【写真】和田秀樹×養老孟司、対談の様子
1.養老孟司「人間のことに一生懸命にならない」。『80歳の壁』著者・和田秀樹が唸った“不良患者のススメ”
和田 僕は養老先生には、一生頭が上がらないんです。僕本当に出来の悪い学生で、臓器とか神経の名前が覚えられない(笑)。でも養老先生は試験の前に「ここを出すぞ」って教えてくださったんですよ。おかげで解剖学の単位が取れて進級もできた。 養老 (笑)。落とすともう1回試験しなきゃいけないでしょ。それはとても面倒くさい。だから教えるんです(笑)。 和田 おかげでスタート地点を生き延びて医者になれました。ところで、今回のテーマが「長生きをより楽しく」なんですが、真っ先に思い浮かんだのが養老先生でした。失礼ながら「老後の見本」みたいな方ですから。 養老 (笑)。 和田 世の中がどんどん窮屈になるなかで、養老先生は今でもタバコを堂々と吸う。そして虫を捕りに世界各地に出かける。とても自由で素敵に見えます。 養老 タバコを吸うのも大変です。ホテルでも決まった場所に閉じこめられる。だけどタバコって「今から吸います」というんじゃない。なんとなく吸うものなんですよ(笑)。
2.上手に老いるには「嫌な人と付き合わなきゃいい。負担になることは避けたらいい」
和田 養老先生はお母様もお医者さんですか? 養老 そうです。父が戦争中の昭和17年(1942)に亡くなり、母が開業しました。 和田 当時としては珍しいというか先進的で自立されてます。 養老 誰もが生きるのに必死でしたから。先ほど日本の同調圧力の話が出ましたが、僕は無理もないんじゃないかと思うんです。つまり物理的な問題だと。人が住める「可住面積」で人口密度を測ると、鳥取や島根がヨーロッパの平均なんです。 和田 いわゆる過疎地ですね。 養老 はい。日本では過疎と言われる所が、ヨーロッパなら普通なんです。それだけ人が寄り集まっているってことです。こうなると、お互いの顔を見ながら調整しなきゃならないでしょ。誰か一人が違うことしてると迷惑になるからね。そうやって長い間に同調圧力みたいなものになっていったのだと思うんです。