灘の日本酒を、大学生が世界へ発信 留学で気づいた日本文化の魅力
プロジェクトから経営戦略を学ぶ
学生は連携する酒造会社の酒蔵を見学して蔵主や杜氏に詳しく話を聞き、その思いをブースに来たお客さんに伝えます。お客さんの反応やアンケート調査の結果を酒造会社に報告し、意見交換します。若い世代に日本酒を知ってもらいたい酒造会社にとっても、意味深い活動になっています。 留学を経験した学生たちの視野は海外にも広がっています。これまでにオーストラリア、シンガポール、台湾、アメリカで、日本酒を紹介するブースを出店し、試飲会を開きました。 「海外の人に日本酒を味わってもらい、その反応に関するデータも取っています。今年は海外各地にある同窓会支部の協力を得て、世界の酒類嗜好(しこう)調査を本格的に実施しようとしています。国内では留学生やインバウンドへの訴求も行っていきます」 連携している酒造会社の戦略はそれぞれ違います。たとえば、日本酒を飲みやすいようにアレンジした商品を出すところもあれば、昔から変わらない味を守ることに注力するところもあります。 「学生は酒蔵の蔵元や杜氏と話すなかで、その蔵の方針を理解していきます。これは経営戦略について学ぶ、非常に有効な場にもなっています」
企業との連携で、成長と自信
プロジェクトの枠組みは木本教授が設計しましたが、そこからの進行は学生に任せ、なるべく口を出さないようにしています。 「学生が主体的に動かないと意味がありません。連携先の酒造会社から出店などの依頼をいただいたときに、受けられるか、だれが責任者になるかなどは、すべて学生が決めています。各社には私から『メールの文面や段取り、お預かりする商品などに関して学生の対応がまずい点があれば、厳しくご指摘ください』とお願いしています」 企業ブランドに傷をつけぬよう、学生は真剣に取り組みます。ゼミの先輩から教えてもらうなどしてビジネスメールも書けるようになり、場面ごとの対処法も次第に自分で考えられるようになっていきます。 「学生は短期間に驚くほど成長します。企業と連携した活動に責任を持って取り組むことが、成長を促しているのでしょう。また、自分たちの創意工夫を評価してもらい、学生ならではの視点を『参考になる』と言ってもらうことが自信につながっています」 木本教授は教育効果を測定する研究も行っており、日本酒振興プロジェクトに見られるような教育形態が効果的だという研究発表もしています。