なぜC大阪のクルピ監督は38歳の大久保嘉人を先発で使い、男もまた5222日ぶり凱旋ゴールで応えることができたのか?
「3日前ぐらいに(紅白戦で)いきなり先発組に入って、自分でもまさかと驚きました。(ベンチ入りする)メンバーに入れればいい、という感じだったけど、逆に『ここでやらないと後がない』という気持ちでプレーしました」 新外国人のオーストラリア代表FWアダム・タガートが、緊急事態宣言発令に伴う外国人の新規入国制限の影響でまだ来日を果たせていない事情もある。一方で若手を大胆に起用する指揮官のもとで、23歳の加藤陸次樹、21歳の中島元彦とJ1でのプレー経験がないFWもベンチに入っていた。 国見高からセレッソに加入し、プロの第一歩を踏み出して21シーズン目。J1で歴代最多となる185ゴールをマークしてきたベテランといえども、確固たる結果を残せなければやがて居場所はなくなる。弱肉強食の掟を誰よりも理解し、覚悟を決めた大久保へ指揮官は目を細める。 「キャンプの段階、そして(大阪へ)帰ってきてからの段階でチームには常に競争があった。そのなかで彼は少しずつ実力を、そしてキャリアで残してきた数字が偶然ではないことを示した。彼が積み重ねてきた経験、いま現在の実力のどちらもが先発にふさわしいと判断した」 サプライズとも言ってもいい、大久保を先発で開幕戦のピッチへ送り出した理由をクルピ監督はこう説明した。そして、ゴールという結果を出して勝利に導いたプレーを笑顔で称賛している。 「ブラジルでもよく言われることだが、ストライカーはゴールの匂いを嗅ぎ分ける能力が何よりも大事になる。彼はまさしくゴールにつながる嗅覚をもった選手であり、さらに最高のフィニッシュの精度ももっている。シーズンを通して、間違いなく重要な選手になってくる」 今シーズンの開幕を迎えるまでのセレッソは大きく揺れた。堅守をベースにする戦い方で、2019シーズンに5位、昨シーズンには4位へと導いたミゲル・アンヘル・ロティーナ監督(現清水エスパルス監督)との契約更新を見送り、ブラジルで引退状態にあったクルピ監督を再登板させた。 上向き状態にあった流れを断ち切る指揮官の交代に、そしてクラブの顔の一人でもあるFW柿谷曜一朗の名古屋グランパス移籍にファン・サポーターは疑問を募らせた。そして、怒りの矛先は当時J1だったジュビロ磐田でプレーした2019シーズンを1ゴールで、J2の東京ヴェルディでプレーした昨シーズンを無得点で終え、限界が指摘されはじめた状況で加入した大久保へも向けられた。 「オレのサッカー人生はほぼ批判ばかりだったから、批判を覆させた先に待っている喜びも普通の人よりもあるんだよね」