なぜC大阪のクルピ監督は38歳の大久保嘉人を先発で使い、男もまた5222日ぶり凱旋ゴールで応えることができたのか?
くすぶっていたストライカーの本能が身体を突き動かした。公式戦で455日ぶりに、今シーズンから復帰した古巣セレッソ大阪の一員としては実に5222日ぶりに決めたゴールの快感が、現役最強ストライカーの咆哮をも蘇らせた。 ホームのヤンマースタジアム長居で柏レイソルを2-0で撃破した、27日の明治安田生命J1リーグ開幕節。両チームともに無得点の均衡が破られたのは前半42分。値千金の先制ゴールを決めて雄叫びをあげたのは、戦前の予想を覆す形で2トップの一角で先発したFW大久保嘉人(38)だった。 「それまでもいい形で抜け出せていたし、点が入りそうな感じがしていたので、中へ入って飛び込むプレーをずっとイメージしていました。あの瞬間はそれが完璧に、ドンピシャに合いました」 大久保が言及した「あの瞬間」を振り返れば、MF坂元達裕、ボランチの奧埜博亮と原川力が右サイドでパスを交換している間に、大久保は柏ゴール前で細かくポジションを修正する動きを繰り返していた。そして、相手選手たちを中央に集めていた坂元が、一転して空いていた外を使った。 攻め上がってきた右サイドバックの松田陸がパスを受け、ワンタッチでクロスを放つまでのわずかな間に、大久保は左斜め前方のゴールポストへ向かってスプリントした。虚を突かれたのか。それまで上下動の動きが多かった分だけ、柏のセンターバック大南拓磨は大久保に対応できない。 ニアサイドには柏の守護神キム・スンギュが立ちはだかっていた。だからこそ低く、速いクロスに対してあえて頭をジャストミートさせない。ダイブしながらわずかにかすめさせ、コースを微妙に変えて反対側のゴールネットへボールを吸い込ませる。匠の技が凝縮された一撃だった。 「練習の段階からリク(松田)とか、マル(丸橋祐介)とかクロスが本当に上手い選手が多いし、あの瞬間はリクからすごくいいクロスが来た。なので自分は相手のディフェンスを外していけばいい、と」 今シーズンからセレッソの指揮官に復帰したブラジル出身のレヴィー・クルピ監督からは、先発を直接言い渡されてはいない。ただ、柏戦へ向けた練習の流れを見ればおのずと判断できた。総仕上げとなる紅白戦。移籍後で初めて主力組で起用された大久保は、驚くとともに覚悟を決めた。