名店のパティシエが教える。モデル・松川星さんが学ぶ正しいフランス菓子 vol.4|「サントノーレ」
誕生と歴史。パン聖人の名前を冠したスイーツ
フランスでも古くから愛されているサントノーレ。島田シェフによると、その名前の由来にはさまざまな説があるそう。島田シェフ「このスイーツは、パリのサントノーレ通りにあった菓子職人・シブーストの店で売られたのが始まりだといわれています。名前の由来は諸説ありますが、店があった通りの名前から名付けた、またはパンの守護聖人として知られるHonore(オノレ)とフランス語で聖人を表す“saint(サント)“の音がつながって“サントノーレ”になったというのが有力です。Honoreはパンの聖人ですが、菓子店にも複数の種類があり、ブーランジェリー・パティスリーと呼ばれる店ではパンもケーキも作っているので、この名前を付けたのかもしれません。クリームは、当初は『クレーム・シブースト』と呼ばれる温かいカスタードクリームにイタリアンメレンゲ*1を合わせたものが使われていました。クレーム・シブーストもシブーストが考えたものなので、このクリームをそのまま『クレーム・サントノーレ』と呼ぶこともあります。ただ、クレーム・シブーストはカスタードクリームが冷めないうちにイタリアンメレンゲを混ぜなければいけないため扱いづらい面があります。そのため、現在ではカスタードクリームと生クリームを合わせたディプロマットクリームを土台に、上部にはシャンティ(生クリーム)も使うことが多いです。生クリームを使うためクレーム・シブーストより軽やかな味わいになるほか、見た目が白く、茶色いカラメルとの色のコントラストが美しい点もメリットですね」*1)イタリアンメレンゲ:卵白に砂糖と水を煮詰めたシロップを合わせて作るメレンゲ。メレンゲは3種類あり、イタリアンメレンゲのほか、卵白に砂糖だけを加えるフレンチメレンゲと、卵白と砂糖を加熱してから泡立てるスイスメレンゲが作られている。日ごろから、チョコレートやケーキを味わうことが多いという松川さん。「見た目と食感のギャップに驚きました」と、その感想を話します。松川さん 「シュークリームは小さなプリンのような見た目で、柔らかめの食感かな? と思っていました。でも、想像以上にしっかり、カリッとした歯ごたえにびっくり。中のクリームは甘すぎず、甘いカラメルとよく合うやさしい味わいを楽しめます」