先生のことは大好き…学校で「荒れる子ども」のタイプに変化、どう向き合うか? 対話を続ける教員の姿を、教室の全員に示して
荒れる教室対応、キーワードは「安心感」と「賢い」
古田氏は重視しているものとして、まず「安心感」というキーワードを挙げた。 「今、子どもたちは家に帰ってもオンラインで友達とつながっているなど、つねに刺激に晒されています。こうした生活の中で、『自分を誰かに見ていてほしい』という脆さも生まれていると思います。しかし何もないCDRの中で、自分で自分を見つめさせるためには、強さと安心感が必要です。これが子どもたちの成長を促すと考えています」 教員は子どもがどれだけ暴れていようとも対話の姿勢を崩さず、それをほかの子どもたちの前でも隠さずに見せ続ける。 「大人の目は問題行動を起こす子どもに向かいがちですが、教室の多数派を占めるのは、教員の話をきちんと聞いて授業を受けている子どもたち。教員が問題行動のある子どもにどう接するかを、彼らはしっかり見ています。それを意識して私たちが行動すれば、それ自体が教室全体への指導になり、安心感にもつながるでしょう。例えば、暴れる子どもがCDRに行くことについても、担任は決して揶揄したり蔑んだりする言葉を使いません。『◯◯さんはいったん教室を出るけれど、落ち着いたら戻ってくるよ。みんなで迎えてあげようね』といった言葉をかけます。教員の行った指導を子どもが家に帰って保護者に伝えたときにも、『それは先生が正しいね』と言ってもらえるよう振る舞っています」 こうした家庭での会話は保護者から教員への信頼を生み、大きな安心材料になるだろう。さらに、CDRなどによるサポート体制の確立は、担任教員にとっても「協力してもらえる、リカバリしてもらえる」という安心感につながると言う。 古田氏はさらに、子どもへの声のかけ方や言葉の選び方もポイントだと続ける。 「子どもたちにどんな自分になりたいかを考えさせるとき、どんな言葉なら伝わるか。考えた結果、たどり着いたのは『賢い』というワードでした」 古田氏が、子どもたちに「学校って賢くなるための場所だよね」と言うと、たとえ1年生であっても意味が伝わる。そして彼らはうんうんと頷く。 「じゃあ、賢いってどんなことかな」 「テストで100点取れること?」 「じゃあテストで100点取った子が、ほかの子をバカにしていたらどう? それって賢い?」 古田氏の言葉に、子どもたちははたと考え込むそうだ。 「テストの点数や何かが早くできるなどの価値観に、教室は非常に強く縛られています。そして問題行動を起こす子どもは、その価値観の中で自信を失っていて、フラストレーションを溜めていることが多くあります。しかしこの『賢い』という言葉は、子どもたちの成長とともに意味がアップデートされ、教室の尺度の呪縛から子どもたちを解き放ってくれるものだと考えています。CDRでも『一生懸命に自分と向き合っているあなたは、賢いと言えるんだよ』と伝えています。子どもが自己の調和を図る上でも、これはとても有効な言葉です」