国立天文台、三鷹移転100周年。「天文学」の神秘を「声」で表現するイベントで思ったこと
司会者の開始の合図とともに、館内は完全に暗転。前触れなく、山崎さんの最初のパフォーマンス「天の川の星々、秋・冬の星座のイメージ」が始まった。 そして暗闇の中、ランタンを持って、石垣さんが登場する。石垣さんは国立天文台ハワイ観測所の助教で、古い星の元素組成や軌道運動をもとに、天の川銀河の形成史を研究している学者だ。 「天の川を実際にご覧になったことがあるでしょうか? 人工の光の少ないところに行くと、夜空に光の帯のような天の川の姿が浮かび上がります。この天の川は、およそ1000億個の星々が作る銀河系の姿です。円盤状に渦を巻く星とガスの構造をもつのが特徴です。銀河系は星や惑星のゆりかごでもあります。私たちの太陽系も、銀河系の中で誕生し、育まれてきました。そして現在の宇宙には、銀河系と同じような銀河が無数に存在します。(後略)」 宇宙の誕生を知る手がかりの話を少ししたあと、山崎さんもランタンをもって登場。その後、石垣さんの解説があり、それを受けての山崎さんのパフォーマンスが続いていく。 「宇宙の暗黒時代から初代星の誕生、初代星による元素の生成」 「シリウス」 「太陽」 「ベテルギウス」 「星からの光のメッセージを読み解く分光観測の表現」 「宇宙誕生~初期宇宙での様子」 宇宙が誕生した今からおよそ138億年前の暗黒から私たちがいる今、ここへ壮大な物語がレクチャーと山崎さんの声のパフォーマンスで綴られていく。山崎さんは20世紀のアメリカの詩人ルイーズ・ボーガンの『私の部屋の中の旅』を引用する。 「(前略) 私の材料とは何か。 世界の材料とは何か。 この、暗闇の中、出発点をもとめてさかのぼる。 輝く星が見えてくる。 暗闇に光をともす最初の星。 やがて自分の重みに耐えられず爆発する。 その一生に、体の中で作った元素。 ばらまかれ、 次の星を作り、次の星が、さらにいくつもの元素をつくる。 私たちをつくる種となる。(後略)」 大きさも時間も人間など比べものにならないくらい遥かな宇宙というものを前にして、たった一人での、しかも楽器などを使わず、声だけのパフォーマンスが、そういう壮大さをイメージさせてくれることに驚いてしまう。