「脳の学習効果」が仇に?! 思考実験で解き明かす、投資家が陥りやすい罠
悲劇を生んだ「コンコルドの誤り」
次の思考実験は、人間の心理と深く関係するものです。 株式投資などで損をし続けているのに、いつか値上がりするはずと考えて、ずっと持ち続け、売る機会を逃して、株が塩漬けになってしまっています。 目先の損を取り戻そうとして、損をし続けてしまう脳のクセを発動させないようにするためには、一体、私たちはどうすればいいのでしょうか? このまま株が上がるまで持っていた方がいいのでしょうか? それとも、すぐに売った方がいいのでしょうか? もちろん、答えは「なるべく早く損切りをする」ということです。 実際に損をすると、損を取り戻そうという自分の考えに傾きがちですが、一時的な損をこうむることになっても、早めに損を確定したほうが、損を膨らませずに済むということです。 損が損を呼ぶ思い込み感情が揺さぶられるときに冷静な判断を欠いてしまうというときがあります。私たちの脳は、損失を利得よりも重く評価する性質、「損失回避性」という特徴を持っています。このために、何か行動をしたときに「損を取り戻そう」という意識が働きやすいのです。 「コンコルドの誤り」または、「コンコルド効果」というのは、イギリスとフランスが共同事業でつくった超音速旅客機コンコルドの名前にちなんでつけられたものです。 コンコルド事業は1969年にスタートしましたが、採算が合わずに1976年に機体の製造が続けられなくなりました。 ところが、イギリスとフランス両国はこれまでの投資が無駄になると考えて、経営難の状態を知りつつ、2003年まで事業を継続し、墜落事故を起こしてやっと事業をやめたのです。 また、「このコンコルドの誤り」を脳の学習効果の1つだととらえる考え方もあります。 たとえば、一生懸命働いた後に飲むビールはとてもおいしいと感じる人が少なくないでしょう。これは、努力をしてつらい思いをしたほうが、得られる報酬が大きいと脳が考えているからなのです。 つまり、損をすればするほど、得られる報酬が大きいと思ってしまうということです。より苦労をしたほうが、得られる報酬が大きいということに因果関係を見てしまうのです。
笠間リョウ