「脳の学習効果」が仇に?! 思考実験で解き明かす、投資家が陥りやすい罠
日々、膨れ上がる情報の波を前に過ごしている私たちだが、情報に振り回されないために必要なのは、やはり「自分の頭で考える力」ではないだろうか。そんな力を鍛える最適な方法として注目されるのが、実際の実験を行わずに頭の中で問題を考える「思考実験」である。思考実験は、いわば考えるゲームのようなもの。楽しみながら取り組めて、思考力も身につけられる現代人の強い味方だ。ここでは、企業研修で思考実験を積極的に行う笠間リョウ氏の著作より、脳の思考グセに自覚的になれる問題を2つ紹介する。 ※本稿は、笠間リョウ著『頭がいい人の論理的思考が身につく!大人の思考実験』(総合法令出版)より一部抜粋・編集したものです。
ギャンブラーが考えた確率計算のミス
これは「ギャンブラーの誤謬」といわれる思考実験です。 あるギャンブラーがカジノでルーレットを楽しんでいます。赤か黒か、どちらかの色に賭けるシンプルなものです。ギャンブラーは、そのカジノに長年通っていますが、その日は見たこともないことが起きていました。なんと9回連続で黒が出たのです。ギャンブラーはこの奇跡に興奮しました。 そして、いよいよ10回目です。さすがに赤が出ないのは不自然だと思い、赤に賭けようとしました。9回連続で黒が出る確率は512分の1です。つまり、約0.2%しかありません。 ギャンブラーの確率計算よると、次は99%以上の確率で赤が出る可能性があると彼は考えました。しかし、ここまでの奇跡を考えると、次も黒が出るかもしれないと悩んでしまっても、おかしくありません。 10回目のルーレットは黒と赤、どちらが出る確率が高いのでしょうか? 実はこの話は、実際に起きたこととして知られています。1913年にモナコのモンテカルロカジノでのルーレットのゲームで26回連続で、球が黒に入りました。このときに多くのギャンブラーが赤に賭けたのですが、結果は黒で、大金を失った人たちがたくさん出てしまいました。 ここまで連続して同じ結果が出ていると、次は異なる結果になるのではないかと考えてしまうものです。科学的でないことに因果関係を見いだしてしまうのです。