海外メディア絶賛の「オーラリー」「ダブレット」「ターク」 日本人デザイナーの評価が急速に高まるなぜ
米「WWD」のマイルズ・ソーシャ(Miles Sacha)は、「井野デザイナーは皮肉的なスローガンを巧みに表現する才能がある」と評し、ショー会場周辺に集まるセレブリティーのファンを例に、時代の空気をコレクションに投影させたことを説明した。「レザーパンツとミリタリー風のハンサムなオーバーコートでショーが幕を開け、鋭い観察眼を持つ人々はそれが日本の男性応援団が着ているようなものだと見抜いた」と、長ランの応援団長ルックは理解されているようだ。
一方で、「ハイプビースト(HYPEBEAST)」のアンドレア・サカル(Andrea Sacal)は、「数ルックは謎に満ちている」と綴り、メタリックなポンポンをあしらったウールコートや、刺しゅう入りのチアリーダーのルックには首を傾げた。とはいえ、「遊び心を基本にしたスリル満点のブランド」と表現し、「今季の最終日をアニメにインスパイアされた楽しさ満載のファッション・フェスティバルで締めくくり、私たちを笑顔にしてくれた」と記した。ディーニーは「井野デザイナーは間違いなく独自の視点を持っている。大きなファッションステートメントではないかもしれないが、日本が今やメンズ・ファッション・ウイークで台頭していることを示す、グラフィカルなコレクションだった」と綴った。
海外メディアの中で最も正確に、細かくリポートしたのが「ヴォーグ・ランウエイ」のアシュリー・オガワ・クラーク(Ashley Ogawa Clarke)である。同氏は日本拠点なだけに、“推し活”を日本視点で理解しているようだ。痛車を例に挙げつつ“痛バッグ”や“痛ジャケット”を正しく説明し、そしてユーモアの陰に隠れがちな上質なカットやスパイバー(SPIBER)との協業による革新的な生地といった、ものづくりの側面についても触れている。「18年に日本人デザイナーとして初めて『LVMHプライズ』グランプリを獲得したことから、“ファッション界最高のお笑いタレント”の地位を得た現在に至るまで、彼のサポーターチームとその歩みを支えてくれた人々への、デザイナーからの感謝の気持ちを表したものだった。バックステージでは、業界全体から集まった熱狂的な『ダブレット』のファンがデザイナーを祝福するために集まったほか、彼のショーを初めて見た数人もお祝いした。『ダブレット』のファン層の拡大は急速に続いている」と締めくくった。洋服を通して笑いを届ける井野デザイナーの進化は、まだまだ続きそうだ。