隆盛スマホゲーム その歴史と現実は?
「供給過多」の成熟市場
現在のスマホゲームは成熟市場に突入している。ただし、それは言わばウェブサービスの一種であった「アバターサービス」にかなり近い場所から生じてきたソーシャルゲームが、アプリの時代に入って「ゲーム」へと変貌した結果でもある。 実際、かつてのソーシャルゲーム開発は、数名の人員が作ったゲームをとりあえず出して、ユーザーの反応を見ながら育てていくという、Facebookのようなネット企業が得意とするスタイルが主流だった。しかし現在では販売開始時に徹底的に作り込んでいなければ、ユーザーに見向きもされず、開発予算は億単位に達するのは珍しくない。また、アプリマーケットで目立つために、テレビCMやウェブ上のバナー広告に投下する広告費も、莫大な予算を必要とするようになった。既にPSPなどの携帯ゲームと比較しても、予算規模的にリスクが大差ない市場になっている。
では、グリーやDeNAのようなプラットフォーム事業者は、どうしているのか。実はプラットフォーム事業からの売上規模そのものは、意外にも横ばいである。しかし、アプリマーケットに比較して、メディア上での印象は確実に薄れていると言わざるをえない。企業全体の戦略としてもDeNAが遺伝子検査サービスなどの新領域への進出を発表しているように、次への模索が始まっている。 一方で、スマホゲームの覇者となったガンホーは、先の四半期決算で『パズドラ』が「減収減益」にあることを公表した。日本経済新聞の取材に答えて、ガンホー森下社長はスマホーゲーム市場が「明らかな供給過多」にあるという指摘とともに、カード育成を中心とした「カード型」の手法から「目新しさが失われつつある」と答えている。冒頭に取り上げたミクシィの『モンスト』も、早くも対戦プレイをメインにした別アプリを発表し、新しい展開に踏み出している。 たった数年のうちに巨大産業となり、成熟市場の局面を迎えているスマホゲーム市場。その中で大手の事業者は、今年に入り静かに新しい局面を迎えている。 ------------------ 稲葉ほたて(いなば・ほたて) ネットライター。 インターネット上の現象をビジネス・文化の両面から取材・分析する。