隆盛スマホゲーム その歴史と現実は?
スマホ移行の象徴としての「パズドラ」
また、ソーシャルゲームを載せるプラットフォームとして、グリーとDeNAは頭角を現した。自社開発のものだけでなく、他社と共同開発したゲームや、他社のオリジナルのゲームなども積極的に載せていったのである。また、この時期からは、有名マンガやアニメのソーシャルゲーム化も相次ぐようになり、コンテンツを複数のメディアで展開する際の一角にソーシャルゲームは座りはじめた。 その最中に起きたのが、マスメディアでも大きく取り上げられた「コンプガチャ」問題である。消費者庁が高額請求への苦情・相談の増加を背景に「コンプガチャ」を問題視、2012年5月には景品表示法違反の正式見解が出たのだ。しかし、当時のDeNAやグリーの決算報告会でも、その影響を大きく見積もってはいない。DeNAに至っては直後の決算で大幅な増収増益を発表、次の四半期決算でもやはり増収増益を維持した。
しかし、この頃からグリーとDeNAの存在感は大きく薄れていく。この時期に産業構造レベルで起きていた大きなシフト――すなわち、携帯電話のスマートフォンへの移行が始まったからだ。 グリーやDeNAのインターネットブラウザにおけるプラットフォーム事業者は、スマホ事業者のアップストアやアンドロイドマーケットのようなアプリストアに新規顧客を奪われていく。一方で、アプリでは高い表現力を持つゲームが可能になるために、既存のゲーム産業が積み重ねてきたノウハウがモノを言うようになった。それによって、ゲーム業界出身の開発者やメイカーが活躍する余地が大きく拡大した。 この勢力地図の変化を象徴するのが、人気オンラインゲーム『ラグナロクオンライン』などを手がけてきたガンホーのアプリ『パズル&ドラゴンズ』である。2012年2月の登場後、コンプガチャ問題でグリーやDeNAへの批判が集まるさなかに、このゲームは急速に人気を博していく。翌年2013年にはガンホーの時価総額は1兆円を超えた。なんと単なる一開発会社であるガンホーが、グリーやDeNAのようなプラットフォーム事業者の時価総額を遥かに抜いてしまったのである。その一方で、例えばグリーはこの時期にリッチ路線のオリジナルゲーム開発を盛んに行っていたが、めぼしいヒット作は一つも出せなかった。