「肉」は膀胱炎など「尿路感染症」の原因になる、世界で患者が急増 感染を防ぐには
尿路感染症が増えている理由
尿路感染症が増えている要因はいくつかある。一つは世界人口の急増だ。 尿路結石や2型糖尿病など、尿路感染症に関連する疾患も増える傾向にある。そして、若い男女の多くが性的に活発になっている。世界的な高齢化も、感染者が増える一因となっている。 尿路感染症が増える中で、抗生物質が効かない症例も増加している。 「私たちが抗生物質の使い方を変えなければ、尿路感染症やそれによる敗血症の治療の選択肢はどんどん少なくなってしまいます」と、微生物学者で米ジョージ・ワシントン大学ミルケン研究所公衆衛生大学院の抗生物質耐性アクションセンターの最高医療責任者シンディー・リュー氏は警鐘を鳴らす。
肉と尿路感染症
肉を食べることは、2つの理由から尿路感染症の原因となりうる。一つは、食肉に含まれる細菌が排泄を通して尿道に感染してしまうこと。もう一つは、畜産で使われる抗生物質の多くが、細菌の抗生物質への耐性を高めてしまうことだ。 家畜の病気を予防するための抗生物質が世界中で使われており、耐性菌を生み出している。コミター氏も、畜産における抗生物質の過剰な使用を、抗生物質が効かない症例が増えている重要な理由の一つに挙げている。 肉を食べると、その中に含まれる大腸菌が腸に定着し、尿路に広がる可能性がある。女性の場合、排泄後、肛門に残った大腸菌がすぐ近くの膣口や尿道口から侵入してしまう可能性がある。 このような感染が起こりうることは、科学者たちは以前から知っていたが、これまで考えられていたよりも頻繁に起こっている可能性が高いことがわかってきた。 リュー氏らが2023年に発表した論文では、米国では大腸菌に汚染された食肉が年間約50万件の尿路感染症を引き起こしていると推定されている。米国では毎年、尿路感染症に関連した医療機関の受診が800万件以上あるため、割合としては小さいが、十分懸念に値する。 米食品医薬品局(FDA)のデータでは、米国の小売食肉製品の30~70%が大腸菌に汚染されていることが分かっているとリュー氏は説明する。こうした大腸菌は通常、火を通せば死滅するため、感染の多くは焼いた肉ではなく調理のときの行動によって起きている可能性が高い。 「細心の注意を払わないかぎり、あなたが台所で汚染された食肉製品を扱うたびに、シンクや、キッチンの表面や、手や、生ものが汚染されてしまうのです」とリュー氏は言う。 大腸菌はそのような場所で増殖し、ほかの食品に付着して、体内に入ってしまう。