命令出ても団体存続? 教団財産は散逸? 「解散」だけで終わらない旧統一教会問題
エイトさんや全国弁連の調べによれば、旧統一教会の日本から韓国への送金ノルマは年300億円。現在も日本からこれに近い金額が送金されていると見られているが、この数年、韓国の教団本部は国内での不動産をめぐる賠償金の支払いなどで資金繰りに苦しんでいるという。だからこそ、活動費として送金を韓国に直接持ち込んでもらう指示まで出ているとエイトさんは言う。 「今年6月の時点で、外為法(外国為替及び外国貿易法)ギリギリの100万円を1人ずつに持たせて1000人渡韓せよ、それで10億円になる、という指示が韓鶴子総裁から出た。結局、それは15万円に減額されたのですが、それくらい苦しくなっている。その指示のときに、総裁が『日本は韓国に賠償する義務がある。岸田(首相)をここに呼んで教育しなさい!』と言い、その音声がのちに報道されることにもなりました。いまもその直接的な献金の要請が強くあり、この9月以降、韓国での修練会というプログラムが切れ目なく開催されています。もともと旧統一教会の活動費の9割以上が日本からの献金で賄われてきたため、日本からの送金が滞ることは教団の死活問題です。だから解散命令が出ることを韓国の教団本部は相当警戒していると思います」
解散命令が出て宗教法人が解散しても、任意団体としての教団は名前も変えずに活動を続けるだろうとエイトさんは見ている。実際、昨年12月、日本の旧統一教会を指揮する方相逸(パン・サンイル)・神日本大陸会長は「もし解散命令が出て、任意団体になっても、通常の企業と同様、税金を払ってでもいいから献金せよ」と日本側に伝えていたという。それでも解散命令が出ることは第一歩だとエイトさんは評価する。 「カルト対策に取り組む人たちにとって大きな一歩です。それに司法によって解散された団体となることで、また問題を起こすのではと警察の手入れがしやすくなる部分もあるでしょう。ただ、この問題はすぐ解決するわけではない。教団の今後を長く監視していくことが必要だと思います」
------------------ 森健(もり・けん) ジャーナリスト。1968年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、総合誌の専属記者などを経て独立。『「つなみ」の子どもたち』で2012年に第43回大宅壮一ノンフィクション賞受 賞。『小倉昌男 祈りと経営』で2015年に第22回小学館ノンフィクション大賞、2017年に第48回大宅壮一ノンフィクション賞、ビジネス書大賞2017審査員特別賞受賞、2023年、「安倍元首相暗殺と統一教会」で第84回文藝春秋読者賞受賞