命令出ても団体存続? 教団財産は散逸? 「解散」だけで終わらない旧統一教会問題
「私は、家庭でも学校でも旧統一教会の教えの中で生きてきました。すべては『世界平和』のため、まことの父母様のため。それ以外の価値観をもっていませんでした。だから、教会を離れると、何を頼り、何を信じればいいのかもわかりませんでした。それを、いまの夫と夫の家族が受け止めてくれたのです。そうした2世などの人たちを社会がどう受け入れてくれるか、教団解散後のあり方も議論が進んでくれたらと思っています」
解散命令確定までの間の教団の財産保全は?=阿部克臣(弁護士、全国統一教会被害対策弁護団)
「旧統一教会へ解散命令請求が出ることは、長く被害者の救済活動をしてきた私たちもうれしく思います。ただ、解散命令が出されても、それですべて片付くわけではありませんし、進めていくうえで法の不備もある。そこをどうしていくかが今後の問題だと思います」 阿部克臣弁護士はそう語る。阿部さんは、旧統一教会の被害救済・抑止に長年取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の一員であるほか、昨年11月に設立され、現在は旧統一教会を相手に集団交渉・調停を行っている全国統一教会被害対策弁護団の一員でもある。阿部さんが危惧するのは、解散命令が出されたあとのことだ。解散命令が出されると、裁判所によって清算人が選任され、清算人が教団の持つ財産を調査、精査して処分する清算手続きに入る。だが、教団の財産保全について現状では大きな課題がある。
「東京地裁で解散命令が出されたとします。すると、教団側は抗告をするでしょう。それが地裁で棄却され、さらに高裁にも抗告する。高裁で棄却され、解散命令が確定するのは、おそらく1年か2年くらいあとでしょう。問題はその間に、教団がもっている財産、不動産が売却されたり、金融資産が韓国に送金されたりと、散逸してしまう可能性があるということです。解散命令が確定すれば、教団は財産を処分できなくなるのですが、そうなる前に処分されてしまうと、教団に債権をもつ被害者に弁済ができなくなる。これは困ります。なぜ財産が保全されないのかと言えば、宗教法人が解散されたあと、教団の財産を保全する規定が現在の宗教法人法にないからです。ですから、解散命令請求が出るのであれば、至急、教団の財産を保全する法律が必要なのです」 宗教法人法を改正するとなると、他団体の宗教法人も見据えた大掛かりな議論も必要になる。そのため、今回は対象を旧統一教会に事実上絞り込めるよう、複数の条件を設定したうえでの特別措置法といった整備が適していると阿部さんは言う。たとえば、過去に不法行為責任を認めた多数の民事裁判が確定している、過去に海外へ多額の送金をしている、質問権行使の対象になっている……。こうした条件をつけられれば、少なくとも現時点では、旧統一教会以外に適用される団体は現実的にはない。ただし、だからといって、被害者にお金がすべて返還できるかどうかはわからないとも付言する。