命令出ても団体存続? 教団財産は散逸? 「解散」だけで終わらない旧統一教会問題
また、解散命令の前後で脱会していく人を社会がどう受け入れていくかも課題だと指摘する。 「これまで教団の教えのなかで生きてきた人たち、一般社会がサタンの世界だと教え込まれていた人たちが一般社会に入ってきたときの受け皿をどうするかも課題です。オウムのときにはそうした人たち1万4000人ほどいて、多くの方の行き場がなくなり、後継団体に入るなど悩ましい事態になりました。旧統一教会の信者はその数倍います。彼らが一般社会で戸惑わないような対策も必要だと思います」
教団の関連団体まで解散命令が適用されるか?=鈴木エイト(ジャーナリスト)
旧統一教会の取材を長く続けてきたジャーナリストの鈴木エイトさんも、解散命令がどこまで適用されるのかは注視すべきところだと言う。 「たとえば、関連団体であるNGOの世界平和女性連合。旧統一教会と創設者は同じと認めながら、自分たちは『ダミー団体ではない』として、全国弁連に抗議し、今年7月には提訴までしています。皮肉なことですが、この裁判で実態が同じということが証明されれば、解散命令が確定すれば道義的にはこの団体の資産も賠償の対象になりますよね。実際、旧統一協会の韓鶴子総裁は、本体の世界平和統一家庭連合、世界平和女性連合、世界平和連合、天宙平和連合(UPF)など『関連団体は傘の下の一つの組織』と2020年5月に発言しており、私も当時報じています。それが当てはめられれば、統一教会の財産が関連団体に移されても網をかけることができるかもしれません」
それでも悩ましい存在が、旧統一教会の政治団体である国際勝共連合だ。共産主義(北朝鮮)に勝利する(南北統一する)という目的で立ち上げられた勝共連合は、旧統一教会と表裏一体の存在である。古くは岸信介元首相が日本での設立に関わり、その後長く自民党の保守政治家との付き合いが続けられてきた。この勝共連合は政治団体として届け出されているため、どこまで関連団体と判定されるのか不透明だとエイトさんは言う。 「旧統一教会内部の人の声としては『勝共連合が本体で旧統一教会は添え物』という意見も珍しくありません。勝共連合が政治家との付き合いを深めてきたのは、警察の手入れを受けたり、追及されたりというリスクを軽減するため。昨今は安倍元首相をリモート講演に招いたように、UPFという従来は文化系の団体も政治に寄っていましたが、どちらの組織も実態は同様です。旧統一教会としては、韓国への送金、献金を手堅く続けてもらうには、日本で旧統一教会の集金システムが必要で、だからこそ政治とのつながりを重視してきた。だから間違いなく両者は一体なのですが、その勝共連合が解散命令でどう変わっていくのかは大事なところだと思います」