命令出ても団体存続? 教団財産は散逸? 「解散」だけで終わらない旧統一教会問題
「脱会した元信者が『自分が献金したお金を返還請求したい』という話はわかりやすいですが、2世や配偶者などの家族が請求する場合、どこまでそれが認められるのかは難しい部分があります。たとえば、高知県の橋田達夫さんの場合、30年以上前に元妻が旧統一教会に入信し、不動産や貯金など1億円以上を献金。その後、離婚したのですが、長男は元妻と一緒に住んでいたなかで3年前に突然自殺しました。橋田さんはいま旧統一教会に献金だけでなく、長男の自死も含めた損害賠償の請求をしていますが、献金には橋田さんご自身のお金も含まれていたからという理由があります。2世の場合は、親が親自身の所有する財産を献金している場合は、基本的にはそれをそのままは請求できない。するとすれば、慰謝料として請求することになると思います」 また、解散命令の効力という問題もある。半世紀以上の歴史をもつ旧統一教会には、出版社や旅行会社など複数の関連企業や関連団体がある。こうした関連企業・団体は宗教法人ではないため、解散命令の効力が及ばないとされる。だが、それは今後の裁判所の判定にもよると阿部さんは言う。
「旧統一教会の財産が精査され、処分されるときに、ある団体の実態を見ると旧統一教会と法的に見てもほぼ一体と言えることがわかったとします。旧統一教会と切り離された、独立した経済活動になっていない。法人の場合は形骸化事例や濫用事例と法的には言いますが、こうした事実があれば、旧統一教会の財産と同一とみなされて清算される可能性はあります」 団体のあり方としても解決されるわけではない。解散命令が出たとき、解散させられるのは宗教法人法に基づく「宗教法人」の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)である。これによって非課税など税制上の優遇措置は受けられなくなるが、任意団体として旧統一教会は存在し続けられるし、献金集めなどの宗教活動も行うことができる。だからこそ、こうした任意団体も監視ができる法整備が必要だと阿部さんは言う。 「解散命令の要件である、宗教法人法81条の<法令に違反して、著しく公共の福祉を害する>と判断された団体がそのまま存続するのは、立法上の不備でしょう。かつてオウム真理教事件のときには団体規制法という新しい法律ができ、後継団体も含め、活動を監視する観察処分の決定がなされました。旧統一教会の場合も任意団体になっても活動が継続される可能性は高く、霊感商法や高額献金の強要、韓国への送金などが継続される懸念があります。ですので、そうした活動がなされないよう何らかの法律が必要です。これはできれば一般法として整備されるべきなのだと思います」