明確な政府発表のない「ガソリン車禁止論」 根深い欧米信仰
テスラやVWより環境対応がいいトヨタやPSA
日本は明治維新で、従来のやり方や文化を根底から否定して、「脱亜入欧」を掲げ、欧米のやり方こそ正しいと考えて成功した。この記憶がいまだに抜けていないせいなのか「ドイツでは」とか「フランスでは」とか「アメリカでは」という上から目線の“出羽守(でわのかみ)”がいまだに跋扈(ばっこ)している。 ガソリン車禁止問題について言えば「すでに世界はEVに舵を切っており、日本がガソリンエンジンに固執すれば、家電と同じくガラパゴスになって日本は滅びる」という話をさも事実の様に主張するのである。
まずは自動車各社の環境対応実績がどうか、そのファクトを明確に書こう。現在、CO2削減に世界で最も成功しているのはトヨタである。それに続くのはPSAグループ(プジョー・シトロエンなど)だ。 もちろん、EV専門メーカーであるテスラは今のルールであればCO2排出はゼロとみなされているが、おそらく早晩ルールは変更されるだろう。より実態に即して地球環境を考えれば、新たなルールになると目される「ライフサイクルアセスメント」(LCA)が主流になる。これは評価方法の正常アップデートなので、そう簡単に覆らないと思われる。その場合、生産から廃棄までのクルマのライフサイクルでのCO2排出量で考えることになる。バッテリーは生産時に多量のCO2を排出するとされるため、他社に比べバッテリー容量が大きく、かつ急成長で生産台数を伸ばしていることに鑑みれば、むしろテスラのCO2排出量は確実に激増しているといえる。
さらに言えば、EVに積極的なメーカーとして花形扱いされるフォルクスワーゲン(VW)は、結局CO2削減に大失敗し、CAFE規制で1000億円規模の罰金が待ち受けている。CAFE規制では、2018年、2020年、2025年、2030年などのように年度毎に各メーカーが達成すべきCO2排出量を当局が定めて、各メーカーは、規制地域内で出荷した全車両の平均でその目標を達成する義務が課されているが、その未達成分については、罰金または競合社が達成して余剰となった分をクレジット(超過達成量)として相場で購入するルールになっている。つまり「VWの過去の結果を見る限り、この罰金が巨額になった結果からみて、部分的なEV置き換え戦略はCO2削減に寄与しない」ということは明確な結果として表れているのだ。全部EV化して台数的に小規模メーカーになるか、大規模メーカーの販売台数を支えられる価格帯の効果的な技術を導入するかの二択であることを現状は示している。 むしろ、一般的にEVに積極的ではないと見なされているトヨタとPSA(プジョー・シトロエン・DS)が実績として1位と2位の環境優等生であるという確定した事実をどう受け止めるのだろうか? 目の前に環境に対する成功事例があるにも関わらず、それを無視して、大失敗が確定しているVWに続けという思考は全く理解できない。