体が柔らか過ぎる「二重関節」は慢性疾患のリスクが高い、コロナ後遺症も、なぜ?
関節過可動性の意外なリスク
関節過可動性は、さまざまな形で現れる。不安定な関節を補って怪我を避けるために、筋肉が必要以上に硬直してしまう人もいる。米ユタ大学の理学療法士で関節過可動性と関連疾患の治療を専門とするクレイトン・パワーズ氏は、「硬い筋肉が支えになるのです」と説明する。 このような硬直はしばしば無意識に起こり、長く続けば体への負担が大きくなる。「身体的に、患者はより多くの代償を支払わなければなりません」と話すのは、関節過可動性と関連症状の治療を専門とする米パーPTの創立者で理学療法士のジョナサン・パー氏だ。代償とは、例えば首、背骨、胸のこわばり、慢性的な頭痛や体の痛みなどだ。 また、あまり知られていないが、過敏性腸症候群(IBS)のような胃腸の問題や、原因不明のビタミン欠乏症なども、関節過可動性に伴うことが多い。ほかにも、ふらつき、動悸、頭痛などのように横になることで改善する症状や、過度の疲労感、ブレインフォグ(脳に霧がかかったような状態)が伴いやすい。 これらの問題の原因は全て、関係する臓器の結合組織までたどることができる。例えば、消化管にはごく薄い結合組織があり、そこに何か弱い部分があれば、食べ物を効率よく分解し、体に栄養を取り込む能力に影響が出る可能性がある。同様に、血管をまとめている結合組織が通常より伸びやすいと、血管は脳に十分な血液を送り込めず、ブレインフォグを引き起こす。 「症状は、人によって少しずつ違います」と話すのは、新型コロナ後遺症の患者を治療する米メイヨー・クリニックの内科医バラ・ミュニパリ氏だ。 慢性的な炎症に加え、病原体から体を守る肥満細胞の過剰活性化など、免疫系の機能不全を示すその他の兆候も、関節過可動性の患者によくみられる。そのため、関節過可動性はアレルギー、自己免疫疾患、食物不耐症などの免疫系の機能不全を伴うことが多い。 「一部の免疫系の調節がきかなくなると、連鎖反応のように次々と免疫の異常が起こってしまいます」とジングマン氏は言う。