モスバーガーの隠し味 テリヤキ、ライスはこう生まれた モスフードサービス(上)
47都道府県の全てに初めて進出した外食企業はハンバーガー専門店「モスバーガー」の運営会社、モスフードサービスだ。注文を受けてから作る「アフターオーダー」や日本の味わいを重んじる商品開発はいわゆるファストフードとの違いを際立たせている。日本で生まれ、日本に根付いたモスバーガーの半世紀余りを振り返る。 埼玉県との境に位置する東京都板橋区の街、成増で1972年にモスバーガーの第1号店ができた。青果店の倉庫を借りた、わずか3坪足らずでのデビューだった。
飛び抜けてカリスマ的な創業者
モスバーガーの歴史は創業者・桜田慧氏を抜きには語れない。外食企業の創業者には伝説的な人物が多いが、桜田氏は飛び抜けてカリスマ的な存在だったといわれる。 桜田氏は旧日興証券の米国駐在時代にロサンゼルス市で出合ったハンバーガー店「トミーズ」にほれ込んで、日本でのハンバーガー店展開を目指した。直接のきっかけになったのは前年の1971年に「マクドナルド」が日本へ進出したことだった。ハンバーガー文化が日本でも広がると先を読んだ。 しかし、桜田氏はマクドナルドの背中を追わなかった。二番煎じを避け、むしろ正反対の道を選んだ。待ち時間が生じるアフターオーダーはその典型例だろう。野菜を各店内キッチンで切ることや、繁華街の一等地を狙わない立地戦略もほとんど真逆。やがてそうした特徴は「モスバーガーらしさ」と受け入れられるようになっていった。 2024年1月31日時点の国内店舗数は1304に達し、日本マクドナルドに次ぐ国内ハンバーガー業界で第2位。コロナ禍を乗り越えた後も好業績が続く。 創業者の情熱や志は今も語り継がれ、モスバーガーの支柱であり続けている。「まだ日本に『ハンバーガー』という言葉すら広まっていなかった時代。当然、必要な食材もなかった。創業者は苦労して見つけた食品メーカーの担当者をロスへ連れていき、味を再現してもらった。その協力先はもともとシューマイを作っていたそうだ」と、モスフードサービスの濱崎真一郎・商品開発部長は当時を語る。