モスバーガーの隠し味 テリヤキ、ライスはこう生まれた モスフードサービス(上)
モスライスバーガーを実現させた「天むす」「焼きおにぎり」
和風を象徴するメニューは「モスライスバーガー」だろう。洋食の代名詞的なパンの代わりに、ご飯で具材をはさんだ逆転の発想は1987年の発売当初、消費者から驚きをもって迎えられた。 「もともとは農林水産省から『コメを活用してほしい』という要請を受けて開発した」と、濱崎氏は誕生秘話を明かす。当時はパン食の普及を背景に、コメ余りが生じる状況にあった。挟む具材のバリエーションを増やし、多彩な商品を提案したモスライスバーガーは1992年に農林水産大臣賞を受賞した。 ご飯で作ったライスプレートで挟むアイデアは「天むすがきっかけ」(濱崎氏)。当初はご飯を具材に使うプランが検討されたが、天むすをヒントにバンズと入れ替えるアイデアが浮かんだ。 だが、誕生までの道のりは平たんではなかった。米飯で挟むにはライスプレートが形崩れしないことが条件になる。強く固めすぎれば食感が悪くなり、ゆるく固めると形崩れしやすくなる。小さい粒の集合体であるご飯はプレート形状と相性がよくなかった。 この難題を解くヒントになったのは「焼きおにぎり」(濱崎氏)。しょうゆを塗り、焼いて成形する焼きおにぎりは形崩れ問題をクリアする決定打になった。天むすと焼きおにぎりという和食の知恵が究極の「和洋折衷」に導いてくれた格好だ。
シャキシャキ野菜の秘密 エキスパートが各店舗でカット
モスバーガー好きが口をそろえる、ごひいきのポイントは「野菜がおいしい」ことだ。これには理由がある。「野菜はセントラルキッチン処理ではなく、全て各店舗でカットする手仕込みを貫いている。だから、フレッシュさが段違い」(濱崎氏) 各店舗での仕込み業務をこなすのは、主婦を中心とするパートの働き手だ。家庭での調理経験が豊富な人が多く、モスバーガーの厨房を支える「縁の下の力持ち」的存在になっている。肉厚のトマトもスパッとカット。アルバイトの学生に仕事を教える師匠としても頼もしい先輩だ。 経験を積んだパートスタッフはしばしば転勤や引っ越しで店舗を離れることがあるが、移り住んだ先でも違う店舗で仕込み業務を続けるケースが珍しくない。「47都道府県に店舗があるので、どこでもスキルを生かせる」(濱崎氏)。ロングキャリアの厨房スタッフはモスバーガーの宝といえる。 レタスのシャキシャキ感には定評がある。秘密は「セ氏4度」。しっかり洗ったレタスを、4度の冷水に1枚1枚浸す。包丁を使わない手切りで分けるのも食感を高めるポイントだ。注文してから作るアフターオーダーならではの丁寧な調理方法だ。 野菜のクオリティーにも妥協がない。全国の産地と手を結んで安定的な調達に取り組んでいる。できるだけ農薬や化学肥料に頼らない方法で育てられた野菜を使用。1997年からは生産者を紹介する野菜掲示板を導入した。2004年に発売した、レタスで挟んだ「モスの菜摘(なつみ)」シリーズは野菜へのこだわりを印象付けた。